神藤くんの言う通り 1/2



生まれつき顔がいいのも問題だ。それは悲しいことに自分の顔面ではなく幼馴染の神藤くんの話であり、俺については至って平凡どころか隣の輝きに負けて霞むレベルなのはさておき。とにかく見目麗しいというやつだろうか、そういえば小さいうちに親が離婚してよく覚えてないらしいが、父方に外国人がいてクォーターだと聞いた。
俺はとにかくその顔を、成長過程をすぐ傍で見過ぎていて、今では見事に他の女の子に興味が持てないほどになった。兎にも角にも、これは俺にとっての大問題だった。

「山下、お前にお客さん」そう呼ばれていけば大抵の場合、神藤くんに告白したいだの何かを渡したいだのと決まっている。俺はささくれ立った心でその日も仕方なく呼び出しに応じてやった。女の子たちは正面切っていく勇気がないもので、必ず本人の目の外でこういうことをするんだよなあ、とか呆れながら話を聞いた。のだが。
「え、俺なの?神藤じゃなくて?」
俺は思わず聞き返し、女の子は俯きがちに頷く。まさか、と思うじゃないか。自分で言うのもなんだが俺は神藤のオマケ的なあれだ。一部の女子にはお前がいるから神藤くんは〜と邪魔者扱いだって受けている。その程度だというのにと、俺は俺で馬鹿なもので、精一杯の勇気を振り絞った女の子を少し不憫に思った。
「気持ちは嬉しいけれど…ごめん、でも…ありがとうな」
そうだ、どうせ俺は振ってしまう。目の前の小さな女の子は少し肩を震わせて、気丈に聞いてくれてありがとうと言ってくれた。茶混じりのふんわりした髪も、小さい頭に大きな目も、白くて丸みを帯びた手も、全体的なフォルムも雰囲気も喋り方も嫌みなく可愛いのに。どうしても頭の中で、あの野郎が顔を出すのだ。


帰宅すると真っ先に、神藤が俺の家へとやってくる。そうして熱烈に後ろから抱きついてきて、ぐいと体を密着させられて引っぺがす。なにが昨日の夜から熱っぽいだサボり魔めと思ったと同時に、俺は実際にその美形の横っ面を叩いていた。
「なにすんのさ」
「うるせぇよ、嬉しそうな顔すんな」
神藤はその綺麗すぎる顔面で痛い思いをしたことがないからか、俺のこういったじゃれあいの範囲で出てくる暴力にはすぐに笑う。特にビンタはお気に入りらしい変な奴だ。溜息をついて部屋に向かうと、トコトコ雛みたいについてくる。
「学校でなんかあったな」
「いちいち報告する義務なんてないだろ」
「俺は今日お休みだったから聞きたいの」
「明日他の奴に聞けば」
「じゃあもう来てあげないけど、いいわけ?」
勝ったと言わんばかりにフンと仰け反って、迷惑極まりない。別にお前が来ようが来なかろうがどうでもいい。俺はバッグを放って、自室だというのにのんびりもしてられずに着替えようかと思いふと手を止める。神藤が俺の方を見ながら自然にベッドへ座った。
「……出てけ」
「恥ずかしがることないじゃん」
「昨日あんなことしといてよく言うよ」
ネクタイだけ結び目をそのままに外して、俺は距離を取るように机の椅子に座る。今日休みたかったのはこっちだ。人の体を玩具にしやがって。
「あんなことって何?ちゃんと口で言って」
「ほんとお前って悪趣味」
「言えよ、勇次」
俺からすれば神藤に表も裏もない。そもそも人間なんて二面性ありきだ。大きくわけて外で人目があれば物腰柔らかな好青年になるのに、俺と2人でいるときは甘えたのバカでスケベで時に男の顔をする。もう全部丸裸で、恥ずかしいもクソもない。だって俺はこいつが好きだ。じゃなきゃ、女の子との未来を棒にふったりしない。
「……お前が俺をレイプしたんだろ」
「え、そっち?」
嫌々に言葉を変えて返して言ってやると、神藤は期待してたのとは違ったと笑って、そのやたらめったら綺麗な顔を、それこそ昨日の夜の出来ごとのように近づけてきた。


順序よくキスから始めて、見えない力にふらふらとベッドまで行く。躊躇する意味なんかなかったように神藤は俺のズボンをパンツごと奪い去って、満足そうに息を吐いた。そうして首のあたりに跡は残さないように吸いついて、新鮮さもない触り方で俺のわき腹をくすぐりながら床に膝をつく。
「ふにゃふにゃ…」
「残念そうな顔してないで早く勃たせろ」
「任せなさい」
神藤はにやっと笑って俺のちんこを咥える。俺もさせられたことはあるが、何が楽しいんだってくらい真剣に丁寧にじゅぽじゅぽと音を立てて奉仕をする。皆がステキだとか言ったって、男のこんなもんしゃぶってるんだぜ、とか、謎の優越感。
「今日もお尻していい?」
「は?ぁっ、おいっ…ソコ、まだ洗ってない」
「ちんこだって洗ってなかったしゴムあるから余裕」
「抜いたときウンカスまみれだったりしてな」
「そういうのはナシの方向でお願い」
汚いことを言っても神藤は萎えないと解っているし、苦笑して受け流す。俺は大人しく足を持ちあげ広げて待ち、尻穴がスースーした。神藤は指にコンドームをはめて青いタヌキもびっくりの素早さで取り出したボトルをそこにひっくり返す。どぽんっと固まりで落ちてきたローションが生温かい。
「ちょぁ…!ぁ、それキモいからやだって…」
「勇次って玉の裏好きだよね」
そんなマニアックそうな趣向は持ってないと言ってやりたいが、言われた通りに玉の裏から穴にかけてをぬるぬるされると気持ちがいい。俺はされるがまま、神藤が尻の穴に指を挿入して萎えないようにちんこをしゃぶってくれる快感に喘ぐだけだ。指が増えて、欲しいところも擦られる。
「ぅあっは、ぁっ、んんっ…んぅっ、あっあっ」
「昨日もしてるしまあまあ緩いね」
「嫌ッな言い方すんな…!」
「褒めてるんだよ」
嬉しくないってのに神藤がキラキラした顔で見てきて、その恥ずかしい熱は下半身に集まっていく。決して俺が緩いわけではなく、神藤が日々ネチネチしてくるからだ。許す俺も悪いのかもしれないけど、せめて共犯だ。好きだから気持ちいいことを共有したいと言い出したのだって、神藤が先だった。好きだと言ってくれたのも。


 


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