Rainy Rapist 1/1



男漁りに凝っていた時期がある。職場の先輩がどうやらそちらの人らしく、そういうお店に行ったことをきっかけに丁度女にも飽きたというテイで始めたことだ。ある程度の知識を身に付け、そのコミュニティー内で有名な出会いの場へ積極的に足を運べば相手はいつでもいた。
ケツの方はなし。触るのも触られるのもNG。とりあえずは色んな奴を試してみた。綺麗めの奴は当然、デブもマッチョも禿げ散らかしたのも。外国人やらその筋的な肌に色を入れているのを除いて遊ぶ。好みにうるさくなければ、女よりも遊べた気がした。ただ度を越せば評判も悪くなる。男を途切れさせたことはないが、次第に周囲の態度も変化した。遂には陰口まで耳に入ってくると所詮そんなものかと飽きがきて遊びも減った。

遊びと言っても真面目なものだ。それらしい愛を囁いて、その気にさせてやって皮膚をくっつける。つまらないものだ。だから日に日に自分の中で抑え難い欲求も現れた。他人を犯すというのをやってみたくなった。強姦、あるいはレイプというものをしてみたかった。
出来るだけ悲壮感漂うような初体験がいい。痛ましさを演出するためにも雨の日を選んだ。予報通りの大雨は傘などお構いなしに横殴りで最高だった。興奮もピークで、とりあえず近所の飲食店の庇の下で適当な男を待った。やがてやってきた背の低いサラリーマンに決めると、頭の中で何かが切れたような気がした。

「お兄さんお仕事の帰り?大変だね、傘も持たないでそれ寒くない?そんなに濡れちゃって随分と冷えてるでしょ、もしよかったら俺の家近いんだけど来る?シャワーくらいは貸せるしさ、そうしなよ。風邪ひいちゃったらいけないからホラ、こっち」
胡散臭さ満点でまくし立て、手を引くと男はオドオドして拒否はしなかった。2人で雨の中に出て小走りで近場の公園へ行く。こっちが近道だと植え込みの中を進んだ。木が茂って、人の気配は全くない。ゾクゾクした。リサーチ済みのそこにはいつの間にか誰かの忘れものだろうレジャーシートが敷かれていて、男をその上に突き飛ばした。
「なっなに…なにを」
「お兄さんも大人でしょ?知らない人に簡単についていったら危ないって教わらなかった?」
「なんだ君は!や、やめ…ッやめろ離せ!」
「大人しくしてればたぶんそんなに痛くないから」
弱いくせに抵抗され、拳で殴ってしまった。視界が悪そうな眼鏡がズレて落ちていくと男が泣きそうな顔をして、パンツの中でもうギンギンになっているのを自覚した。
「や、やめてくれ…ひぃっ…か、金なら出す…」
「そういうんじゃないんだよね」
貧弱な男の上に被さって、変色したスーツのジャケットをめくってシャツのボタンを飛ばしながら脱がす。緩んだネクタイをどけて冷たい胸にしゃぶりついて、ようやく事態を飲みこんだらしい。変態だと叫んで手足をめちゃくちゃに振りまわす。肘が頭に当たって苛立ち、もう一発殴るフリすると男はびくんと小さくなった。
「お願いします…やめてください…やめて……」
「なんで?お兄さん乳首勃ってるじゃん」
「これは寒くてっ違うから、ぼっ僕はゲイじゃない…!」
「どうでもいいよそんなの」
同じ男がこんな風に被虐の対象になる現実を前に、早漏でもないがいまにも誤射しそうだ。もう一度胸を舐めていくと男は今度こそ大人しくなって嗚咽を漏らした。乳首を噛むと痛いと泣いた。いじっても気持ち良くはないのだろう、ただ赤くなりツンと尖るだけで快感を得ていないのはわかる。スラックスの中に手を入れると雨水が染み込んだ下着の中で、ペニスが縮こまっていた。
「これ早く勃たせてよ」
「むりっ…無理です…いやだ……っ」
「無理じゃねーって」
「痛ッあっ!痛いっ、離せ…あぐっ!」
「じゃあ自分でやれ」
「わか、わかりましたから…っう、うぅう」
下着越しにめちゃくちゃに擦ってやったら男が泣いて了承した。おずおずと両手で小さくなったそれを守るように包んで、緩やかに指でいじりだす。たまらず立ち上がりカウパーを零す勃起したペニスを取りだすと男がヒクッと顔を引き攣らせた。
「これしゃぶって、濡らさないと」
いやらしい妄想の一つでも詰まってなさそうな頭を小突き、耳をなぞって頬をなじる。亀頭を唇の間にねじ込んで、歯が最後の抵抗を見せていたのは少しだけ可愛いとも思えた。生温い口蓋に擦りつけていると男は吐き気を堪えるような顔をして、髪を掴んで脅すと目を瞑って舌を触れさせてくる。これまで経験した誰よりも下手な、技巧もない動きがさらに興奮した。
「もういいや…お兄さんには悪いけど、我慢しててよ」
「ま、待ってくれ!それだけは、それだけはどうか…!」
もう少し楽しんでもよかったが、どうせなら突っ込んで射精したかった。手早くゴムを被せる間、逃げられないように腹を踏みつけていたら、結局なんの反応を見せなかったペニスが余計に縮こまったように見えた。可哀想に、と笑ってやる。諦めの悪い男をひっくり返して尻を持ち上げさせ、見た目汚くはなさそうな穴に先っぽを宛がう。
「無理だ、そんなのっ入らないっな、慣らさないと…」
「ゲイじゃないのにそんな手順は知ってるんだ?本当は興味あったんじゃない?犯されたかったんだろ?なあ?」
「違う違う違う!本当にちがッ、ア゛ア゛ッッ!?」
男の言葉を無視してアナルを犯した。初めてのことだが、案外すんなり入るものだとそれからはめちゃくちゃに腰を振った。気持ちがいい。女の穴よりずっといい。ぎゅううと強請るように吸いつくじゃないか。
「嫌だぁッ!あっ、痛いっ…裂けっおな、お腹っやぶ、ああッん、ふぎぃッ、ぐっあ!し、死ぬ!」
悲鳴のような濁った喘ぎ声は雨が葉を打つ派手な音がかき消し、助けてくれと懇願するように伸びた男の手は土を掻いただけだった。肌をぶつける音も水っぽい。射精感が高まるのはどうしてなのかを、考えた。この上なく気持ちいいこの行為を、何故今まで知らずに生きてこれたのか不思議でならなかった。
「あーっ、お兄さんのナカいいよ、最高」
「もうやぁ…ッ抜いてっ痛ッぁ、ああっあ、やらぁあ」
「スッゲ締まる。俺もうムリ」
「ぇう!?あ、し、死ぬっそんッ痛、ァッん゛ーっ…!」
ラストスパートに腰を抱き直して絶頂を目指して打ちつける。男は惨めにも唇をきつく噛んで最後の瞬間を迎えようとしていた。後ろから背中の肉を思い切り噛んで、傷になれとばいいと思った。途端、肉壁が一気に搾りとるようにペニスを締めつけた。
「あっイクッイクッ…ぅ…ッ!」
熱が、放出される。目がくらむほどの強烈な快楽だった。男がイったとは考えにくかったが、腕の中の体はびくんびくんと痙攣して力なく水たまりをつくるレジャーシートの上に崩れ落ちた。
「ふぅ…気持ちよかったよ、お兄さん」
ペニスを引き抜くと確かにつけていたゴムは消えていて、精液の重みで男の体内に取り残されたようだ。まあいいかと一息ついて退散する準備をしながら立ち上がっても、男は体を丸めて呻くばかりだった。せめてもの償いというのもおかしな話だが、ずり下がった泥まみれのスラックスを傍に寄せてやろうとして、さっきまで夢中で気付かなかった携帯の存在を知った。
「ねえ、電話鳴ってるよ」
古い二つ折りのガラケーが電子音を響かせて着信に震える。男がこちらを睨む気力も失くしているのを横目に開いて、ディスプレイに表示されていたのが男の下の名前だと確認して、声を発さずに応じる。

『もしもし?さっきはごめんな、傘届けるから今どこにいるんだ?おい、聞いてる?俺が悪かったよ、ほんと謝るから。お前だけなんだって…な、迎えにいくから』

「嘘ついたな」
詰まらないもんだ。携帯を男に投げつけて、ぐちゃぐちゃに濡れた尻を蹴飛ばす。相変わらず腹は立っていたが、言い知れぬ感情も湧き上がり、その場を上機嫌で離れた。



141006


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