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僕が小説を書く理由は不純だ

※小説家になろうサイト様に投稿したものの転載です。そちら向けに書いたので、一部分かり辛い表現があります。
※読んでいて不快と感じた方は、速やかにブラウザバックをお願いします。




 僕は自分が好きだ。
 学生時代、人より国語の成績が良かったことを褒められたり、感想文や作文で優秀賞をとったりする度に、口では「たまたまだって」と言いながら、内心優越感を抱いて周囲を見下していた。
 運動神経は悪いというより無い。勉強も中の中から上の下を行ったり来たりでとりたて凄いわけではない。けど一つだけ、国語の成績だけは特別に良かった。だから僕は、文章を読み書きする事に、固執する様になったのだ。
 昔から読書が大好きで、ミステリーにはまった時期もあれば、ファンタジーに熱中した時期もあり、純愛小説に焦がれた時期もあれば、時代小説を漁った時期もある。友人たちの間でケータイ小説が出回った時は、「横文字小説なんて」と馬鹿にして、芥川賞作品を読んでいた。
 何度も言うが、僕は自分が好きだ。
 人目を気にする様になったのはいつからだろう。純粋に読書が好きな事も確かだが、“読書”する事によって得られる“賢そう”“すごい”というステータスに惹かれ、そういう敬意を含んだ視線を向けられたいがために、“読書”する様になっていった事は事実である。けれど別にそんな自分を卑しいとは思わない。繰り返すが僕は自分が好きだ。不純な理由に非難を受けるだろう事を、なにより自分自身がよく分かっているという事実が、“分かっているけどその思いを捨てられない。正直にありのままを受け入れる自分はすごい”と、全て自己肯定してしまえる。僕は自分が好きなのだ。

 オンライン小説サイトに、自分が書いた小説を初めて載せたのは、中学生の時だ。
 中学生。中二病なんて俗語がある通り、こういうものに惹かれ易い時期であり、クラスの人とは違う事をしているという特別感に、満足を覚える時期でもある。
 さて、どうして小説を掲載したかと言えば、これまた不純な理由だが、僕は自分が書いたものに対して、世間の評価を受けたかったのだ。
 別に小説家になりたいわけではない。目指してもいなければ、なりたいな、とすら思っていない。
 真剣に小説家を目指して投稿している人には不愉快だろうが、僕は「面白いです」という評価を欲しいために書いているのだ。

 ある漫画で、漫画家には二種類いる。一つは書きたい事を書きたい様に書くタイプ。一つはどうやったら売れるかを計算して書くタイプ。そういった事を述べるシーンがあった。僕は限りなく後者に近い。どうやったら面白いと言ってもらえるか、どうやったら楽しんでもらえるか。読者の反応を予想して、評価を貰いたいが故に書くのだ。
 僕は小説家を目指して投稿しているわけではない。自分の趣味で書いている。しかし、書いて公表するからにはそれなりの高評価が欲しい。
 友人たちには自分が小説を書いている事を隠している。リアルの僕と、小説から受ける作者の印象は、自分で言うのもなんだがかなり異なっているだろう。僕は自分が好きだから、友人たちに「え、こんな事書いてんの?」と引かれたくない。けど、評価は欲しい。だからオンラインというのは気軽だし、当たり前の常識さえ持っていれば、気兼ねする事無く活動出来る。
 そして評価や感想を貰ってニヤニヤして、そこで満足する僕は、感想の返信どうしよう、ちょっとめんどくさいと頭を抱えるのだ。読者を大切に出来ないのだから、やっぱり小説家は無理だろう。

 僕は自分が好きだ。
 評価が欲しくて書いているし、高尚な精神なんて持ち合わせていない。だから、サイトで議論される「最近の小説の質(クオリティ)」やら「読者や作者の常識(マナー)」やら「ポイント稼ぎ」やら「ブームのせいで本当に面白い作品がランキングに入らない」やら「○○の批判」やらには全く興味が無い。いや、正直に言えば、「へぇ、こんなことが問題になっているのか」とは思うが、議論に積極的に加わろうとは思わないのだ。
 下心満載で好きな時に好きな事を書いて、時間がある時に自分好みの小説を発掘して、また書いて、読んで。

 僕は自分が好きだから、自分のために好きに書いて、自分のために読書するのだ。







 ここまで書いて、私はしみじみ思った。自分はエッセイに向いていない、と。
 自分が好きとはつまり、自分の身が可愛いという事である。
 エッセイとはつまり自分の意見を書くわけだから、反応は賛否両論様々であるはずである。自分の身が可愛い私としては、これを読んで「そういう無関心さが問題を生むんだ」なんて批判をされるのが怖いわけだ。
 エッセイのくせに物語調にしたり、フィクションとノンフィクションを曖昧にした語り口や、一人称を“僕”としたのは保身に他ならない。

 それでも私は、大なり小なりこんな意見を持っている人は、実は多いんじゃないかと思うわけだが。

 リアルで必要なとある原稿のために、練習として書いた意見だ。さして反応はないだろう。
 忌憚なく自分の意見を述べる人はすごいなと、感心する私は今後この様な文を書く事はない。
 評価欲しいと、コメディ作品の案を練って、明日もパソコンに向かうのだ。


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