彼らの恋愛事情 | ナノ



女性視点*高橋頼子の場合


 ええ、彼は面倒な人でした。実に面倒な人でした。わたしの予定なんて気にも留めず、自分の我が儘を当然の様に押し通す、同じ社会人とは思えない人でした。え?お姉さんとあんなん一緒にしちゃダメだよ?ありがとうございます。でもあなた…えー、っと、あ、美濃部くんですか、美濃部くんは知ってるんですか、彼のこと。あんなん呼ばわりしといてなんですけど、よく知りもしない人を悪く言うのはいただけませんよ。え?多分知ってる?……加賀、芳弘。はい、確かにそうですね。高校生にも迷惑掛けてたんですね、あの人。ああ、高校生。そもそも今日わたしが部下にドタキャンしてまでここに来たのは、婚約者に急に呼び出されたからなんです。急にですよ、急に。しかも単刀直入言われた言葉が『好きな女がいるから婚約解消する』。何なんですか、まったく。あ、いえ。婚約解消が不満じゃないんです。あの人に男としての魅力を感じたことはありません。ただ、ですね。いきなりですよ、いきなり。わたしだって、好きで婚約者やってたわけじゃないんですよ。親が仕事の関係上、都合がいいからって勝手に決めたんです。時代錯誤?ですよねぇ。でも、そうなんですよ。だから……、あ、分かったって顔ですね。ええ、そうです。わたしが嫌なのは、事後処理をぜーんぶ丸投げされたことです。あまりにも一方的でしょう?…本人?ああ、なんか愛しの彼女さんがわたしたちを見ちゃったらしくて、泡食って追い掛けていきやがりましたよ。あ、すみません、つい。――え、いや、そんな。お嬢様だって口調荒くなりますよ。あら、似合う?それはそれで複雑だけど……ついでに敬語もとれるといい、って……、流石に初対面で…、いや、初対面で愚痴ってるじゃないですかって突っ込みはナシでお願いします。美濃部くん、――え、…美濃部くん……、美濃部くーん……、…、…春人、くん。…はい何でしょうってアナタ、イイ性格してるわね。それほどでもーって、褒めてないんだけど。あ、続き?うん、お察しの通りですよ。やっぱ会社とか親とか複雑怪奇なシガラミがあるわけなのよ。それをわたしが全部処理しないといけないのよ!?やってられるかってんのよ!――あー、うん。悲しくて泣いてたんじゃなくて、怒りで涙が…。なんかごめんね、こんな理由で。うふふふふー、サーパパとママの説得頑張るゾ。やば、また視界が滲んできた…。――って、ちょ、美濃部…じゃなーい、春人くん、何してんの?…は?ちょ、え、え、ええ、…ちょ、ええええっ!!??


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