翁の話8

「寝ているのか?」

「起きてる」

「ポチに聞いた」

「ポチはすぐ喋る…」

拗ねたような口調だったがどこか楽し気ではあった。
フォレガータはぽつりと佇む石の前に摘んできた花を添え、
石の傍らに横たわるアガタの傍に腰を下ろした。

「3回めか4回目の墓参りで泣き声が聞こえてさあ」

ぽつりとアガタは話し始めた。

「何だろうと思ったら赤ちゃんいてさ。あ〜コレかあって思ったよね」

泣き声を辿り、見つけたのは籠に入れられた小さな赤ちゃん。
目が覚めるような金の髪で元気に泣き声をあげていたが
近くに人の気配がなかった。
すぐにポチが駆けつけてきて連れて帰ると言わんばかりに
赤ちゃんが入っている籠の取っ手をくわえて、
家へとさっさと戻ってしまった時には
さすがに家主はどちらなのか?と疑問に思ったものだ。

「寂しいのか?」

「多分ずっと寂しい。これは俺が死ぬまで続く」

フォレガータは私がいるだろうとは言わなかった。
アガタにはそれが嬉しかった。
確かに家族が出来たのは嬉しいが誰かが『翁の代わり』に
なることは絶対になかった。
それを分かっていたフォレガータはただそっとアガタの頭を撫でた。

「その寂しい思いをお前の子供たちが今味わっているぞ」

「えっ、じゃあ帰るか…」

今日は久しぶりに山の小屋に泊まって、バーベキューをする予定だ。
多分今頃キリが妹と弟のために火おこしに悪戦苦闘していることだろう。


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