「天使様、ちょっと神父様を呼んできてください」

「はあ?なんで俺が」

「あなたここの主じゃないですか」

「誰が主だよ…ったく…」

あくまでこの教会の主は神父であってルシフェルではない。
ただ、教会に住み着く天使がいるのであれば一番自由が利くのは堕とされたとは言え
ルシフェルだった。
しぶしぶと言いたげにしながらもルシフェルは顎で人を使うユダの頼みを聞き入れ、
神父と修道女が話しをしているであろう部屋へ向かったが、15分ほどすると
慌てた様子でユダの元へ戻ってきた。

「おいおいおいユダ!マジで食ってた!じじいマジでさっきの女食ってた!!」

「へ〜神父様もやりますね〜」

「でもじじいの盛ってるとこ見るのは辛かった…」

「もしかして…全部見たんですか?」

「ウン」

子供のように素直に頷くでかい図体をしたルシフェルにユダは頭を抱えた。
この男はなんてバカなのだろう。
人として信じられない。

「なんで早く僕を呼ばないんですか!!」

「え?!…ごめん…やっぱり女を助けるべきだった…よな…?」

しゅんと落ち込むルシフェルはそれなりに可愛らしかったがユダはそれどころではない。
この間抜けた堕天使に眉を寄せて苛立ちを思いっきり遠慮なしにぶつける。

「はあ?何カマトトぶってんですか。客呼ぶんですよ。見物料とって
見世物にすればよかった…くそ…天使様時々本気で馬鹿ですね」

「お前も期待を裏切らずに最低なまでのゲスだな」

「キレイゴトだけで金が振ってくるわけないでしょう。天使様の着てる服だって
僕が汗水垂らして恐喝したお金で買ったんですよ?」

「ずれてる…なんかずれてる…」

「まあいいや。やっぱり娼館に紹介しよう。もう情事済んでました?」

「あ〜、多分」

「じゃあ行ってきます」

今度は当初から用事のあったユダが神父の元へ向かう。
ルシフェルは一応見終えてからここへ来たから多分気まずい空気にはならないとは思うが、まず、そう言う心配を一切していないらしい。
天使よりも度胸がある、と言うよりは神経がかなり図太いようだ。
さすが、人をおとしめる事にも心を痛めない冷酷な人間だけはある。
暫くそこで待っていたルシフェルは行きと同じ様子のままのユダへ状況を尋ねた。

「どうだった?」

「丸め込みました。結構可愛かったですねえ。彼女」

「だろ?なんでじじいの下に…」

「そうですね、天使様が僕の下になるくらいですからね」

「だから、なってねーだろ!!」

「!!あんなに激しかったのに!?」

「誤解を招くような言い方はやめろまじで殺すぞ…」

ルシフェルの沽券に関わるので一応弁解すれば、ユダがルシフェルへ慰謝料を
支払い終えた後、その礼にとルシフェルをご飯をおごった訳だがルシフェルは
天界にはない料理に目を輝かせてそれはそれは激しい…食事会になった。
一品テーブルへ運ぶと珍しい動物をみた子供のようにはしゃぎ、酒をあおり、
酔っ払ってテーブルの下できゃっきゃと騒ぐルシフェルにユダは腹を抱えて笑ったのだった。
夜が明けて酔っ払っていた記憶があるかとユダが尋ねるとルシフェルは人生の恥だと
真っ赤になって悔しがっていた。
天界には酒が無いのだろうか、それともルシフェルが飲んだ酒がたまたま
彼の体に合わなくて悪酔いしたのだろうか、それはさだかではない。

「あ?やんのか?」

「ゴメンナサイ…」

「あっ、ごめんなさいってなんか可愛いですね。服従させてるみたいで興奮します」

「お前の性癖を本気で疑う」

「やだなあ、照れます。大丈夫ですよ焼き餅焼かなくても。僕は天使様だけですからね」

「それはそれで問題アリだからな、お前」



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