「その羽根って消せないんですか?もぎとるとか」

「さらっと怖いコト言うな。後半は完全にお前がやりたいだけだろ」

「てへぺろ」

可愛い子ぶって舌をぺろりと出し、ウインクをしながら肩を竦めて自分の頭に
拳をつけているユダは、憎らしいほどに可愛かった。
元々容姿が整っているだけにブリッ子をすると異様に映えるのだ。
かと言って女々しい雰囲気ではなくどちらかと言えばさわやかな青年の雰囲気だ。
ルシフェルはその逆でワイルドな雰囲気を漂わせている為二人で並ぶと
それなりに絵になった。
但し中身はさっぱりだが。

「一応消せるから…待ってろ…ええと…」

「わ、しまい方なんか可愛いですね…手伝います?」

「うっせ、触るな。穢れる」

「もう真っ黒じゃないですか何処女ぶってんですか」

たどり着いた洋服店の角の路地に入り、人目につかないように
ルシフェルの羽根を収納している。
みるみる内に背中に飲み込まれていく羽根を見届けるとルシフェルはぱっと見、
普通の人間と大差ない姿になる。

「お前せめて童貞ぶってるっていえよ。女じゃねーんだし」

「少女のように可愛いですよ、愛してます」

「キモイ」

「スイマセン僕もキモかった」

二人は店に入りながらも話を続け、ユダは身震いしてほら鳥肌、などと
袖をまくって腕を見せてくる。
見事なまでの鳥肌だ。

「お前のそれって何?癖なの?」

「いえ、普段はこんなキモイ事死んでも言いませんね。天使様が魅力的な証拠ですよ」

「あ、そう」

「突っ込むの疲れたって顔ヤメテ下さい。寂しいじゃないですか」

いらっしゃいませ〜と声を掛ける店員に軽く会釈して店内を物色する。
店の内装はごてごてしていてなんと言い表していいかわからないが、木目の内装に
木製の棚が中央に2つ置かれていて、たたまれた洋服が規則正しく配置されていた。
壁にも似たような棚があってそこにはハンガーで洋服が吊されている。

「んで、どれがオススメ?うわ〜なんだよコレ。だせ〜お前らのセンスがわかんねえ。
…なんで隠すの?」

「知らないんですか?ここでは乳首を出すと開発してくださいって意味なんですよ?

「エッ」

ルシフェルはユダが今着ているような白いTシャツを掴みながら恐怖に表情を固める。
ルシフェルが今身につけている服は胸元が大きく開いており風通しがいいが、
ユダの服は首回りから腰まで布でしっかりと覆われている。
とはいえ、ぴったりした服ではないので袖や裾から風が通るらしくそこそこ涼しいらしい。

「路地裏に気をつけて下さいね襲われても知りませんから。イヤむしろ僕的には
嬉しいかな〜」

「お、お前の着てるのでいい。似たようなヤツ!コレ?コレか!?これだろ!?」

「そうそれです。それともおそろいにします?」

「それはヤダ」

「つまんない」

「ひよこ口ヤメロキモイ」


とりあえず3日ぶん位の洋服をユダが少女から恐喝した金で購入し、
店を出たルシフェルは1着だけ着てみたわけだがどうにも違和感が拭えないでいた。
ざらざらとした肌触りで暑いし、何より胸元に布があるのがとても煩わしい。

「はーなんか…まとわりついて暑い…」

「でも似合ってますよ。かっこいいです」

「そ、そう?」

「ほら、女の子達がちらちらこっち見てるし。天使様顔はいいですからね」

褒められて悪い気分のしないルシフェルはちょっとだけ頬を赤く染める。
ユダがちら、と視線だけを周囲に向けてやるとルシフェルもそれにならって
周囲の様子をうかがってみたがユダの言う通りすれ違う女達が気恥ずかしそうにしながらも
こちらの様子をうかがっていた。
だが決して上げっぱなしはしないユダは最後の最後でルシフェルの気分を急降下させる。
おまけだと言わんばかりの余計な一言にルシフェルは眉を寄せる。

「最後の方なんかとげが刺さったんだけど」

「気のせいじゃないですか?僕抜いてあげましょうか?」

「ちょいちょい下ネタはさんでくるのヤメロよお前」

「え?今のどこに?」

ユダが心底きょとんとしたのでルシフェルはいくらか面食らって聞き返した。
ユダならば恐らくそういう意味も含めていたと思っていただけに
予想外な反応が返ってきて思わず目が泳ぐ。

「えっ?」

「あ、ああ、抜くっての…別にそこまで深い意味で言ったんじゃないんですけど」

「ああああ、そう!、そう!」

深読みをしすぎた、と気づいたときにはすでに遅く、
まんまとユダに隙をみせてしまったルシフェルは心の中で自分が持てるだけすべての
言葉で悪態つく。
どんな状況だろうともこの男にだけは失敗や隙を見せてはいけないのに
あっさりと墓穴を掘ってしまったわけだ。

「いやらしいですね〜天使様。流石神様の女を寝取っただけありますよ」

「うるせ…もう黙れ…」

今日はもう何を言っても勝てそうにないと踏んだルシフェルはあっさりと白旗を上げて
それからのユダの言葉の攻撃にただひたすら耐えたのだった。








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