「お前、俺たちが覗きに行くの知ってただろ」

「はあ、まあ」

じと、と睨むとアスターは気の抜けた返事をする。
困る風でもなくおもしろがる風でも無いので尚更馬鹿にされているような気分になった。

「性格悪いな…」

「だって辞めて下さいって言ったって他のやつらにたきつけられて
どのみち行くでしょう?」

「そりゃあ…」

「その代わり女の子達には言ってませんよ。安心してください」

バジル自身は、別に女子達に自分の行動を漏らされるのが嫌なわけじゃ無くて
アスターに知られる事の方がどちらかと言えばバツが悪い気分になるのだ。
彼女は、例えバジルが卑怯な行為をしてもきっと幻滅するなんて事はないのだろう。
無条件にバジルを庇護し、身を挺して守る。
それがアスターの役目だった。

(なんでこいつなんだ…クソ…)

姿格好はまるで男だし、性格もさばさばしていて男よりもむしろ女にもてる。
実際にアスターに告白した女子もいたそうだ。
それを聞いた時はさすがにネタかと思ったのだが、アスター本人に尋ねたら
げっそりした様子で首を縦に振るので笑い飛ばす事も忘れてしまった。
告白する彼女達の気持ちが痛いほどよく分かるのが悔しいがそれ以上に
男だけならいざ知らず、女にまで嫉妬をする日が来るなんて思いも寄らなかった。

「若」

「なんだよ」

「拗ねていますか」

「拗ねてねーよガキ扱いすんな」

「そうですか。それは失礼致しました。それでは若。お館様に言われていた領主のご子息としての仕事をしに行きましょうか」

「ガキ扱いしてんじゃねーか…」







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