「しんっじられません」

「…男はみんなそう言うものだッ」

地べたに座らされてて居心地悪そうな青年達は、
口の中でモゴモゴと文句を言っているが
一言言うか言わないかのうちに少女達の罵声が飛んでくるものだから
かなわない。

「さいてー!」

「変態!」

「馬鹿!」

「そんな人達だと思わなかった!!」

「貴方たちが行った結果がこれですよ」

彼らを召し捕らえた張本人が仁王立ちで青年達のリーダーを
見下ろす。
リーダーの青年は、他の少女達の言葉は耳に入っていないようだが
これまで生きてきた中で今一番青年を軽蔑しているであろう人物の言葉は
しっかりと受け止めているようだ。

「そんな冷めた目で見るなよ…」

「「「「見るわよ!!」」」」

この集落には男子禁制の水浴び場があった。
広くもなく狭くもない丁度良い広さの湖で湖面をのぞくと透き通った水の中には
小さな魚たちが泳いでいる。
時々羽を休める鳥や、動物が寄ってくるので特に女子達にはお気に入りの場所だった。
穏やかな時間が流れる場所に男が入ってはやれ狩りだやれなんだと
汚されたり動物が寄ってこなくなってしまうため
集落の女達全員が一致団結してこの場所を男子禁制としてしまったのだ。
普段滅多に声を荒げない大人しそうな女までもいきり立つので
男達がいよいよ根負けして今に至ると言うわけだ。
けれどもそんな女の園があると聞いてじっとしていられないのが男の性である。
それは歳が若くなるにつれて気になるようで彼らも自分達の本能にのっとり
起こした行動が覗きであった。

「イオなんてそんな怒るほどのもん持ってないだろ」

「な、んですってー!?」

「まー、確かにのぞいたのは悪かった。でもなあお前ら。
うちの番犬を使うなよ。一応俺の部下だぞ」

「あんたのじゃないでしょー?領主様の部下でしょー?」

「アスターは見張りをしてくれてただけよ」

「まんまと罠に引っかかるとは思ってませんでしたけどもね」

「笑うな…」

大笑いするでなく、口元だけで笑うので尚更に恥ずかしさがこみ上げる。
そうであればよっぽど笑い飛ばしてくれた方が救われるというものだ。
アスターの仕掛けたのは外敵を捕らえるもので地面に縄状の袋を埋め込み、
入り口をすぼめる縄を上手く植物に紛れさせて木の枝に引っかけ、
縄につないだ紐を人が通る道の地面すれすれに張り、そこへ引っかかった人間を
紐が切れた勢いでつり上げると言う原始的な罠だった。
よっぽど注意していれば引っかかるようなものではないのだが
彼らは周囲の注意よりも欲望の方が勝ったのか気がつかずにあっさりと捕獲されたわけである。

「ああもう、悪かったって」

「反省しているように見えない」

「まあ後は彼女たちのご機嫌をとってください。私は帰ります」

「おいちょっと待て。見捨てるのか!」

てきぱきと罠を片付け終えたアスターが言うとバジルは少し焦った様子で引き留める。
今度こそつかれたように溜息を吐いたアスターは眉間に皺を少しだけ寄せた。

「私からも小言を言われたいんですか?」

「いや…いい…」

「バジルはアスターには頭が上がらないわよねえ?」

「うるさい!」

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