「ふっ…くく…」

「大臣、そう言うものはもう少し引っ張ってから明かすものだ」

「えっ!?引っ張る…んですか?」

「カントの顔…!!」

堪えきれなくなったエムシが勢いよく吹き出して笑い声を上げる。
事実を知っていたのはフォレガータとエムシのみだったので
突然笑い出した皇子に兵士も裁判官も、青年も呆気にとられていた。
騙されたと確信したカントは顔を真っ赤にして兄へ恨めしそうな視線を向ける。

「…!!兄様知ってたのね!?」

「当たり前だ。王族なのだからそれくらいは知っておかないと。お前の勉強不足だな」

「母様も!」

涙を目尻に溜めた兄から今度は標的を母へ写すとフォレガータは至極まじめな顔のままだった。

「私は言った事は実行する。お前はしばらくの間謹慎だ」

「え!?」

「謹慎した後、外交にも参加して貰う。自分がした事がどれほどのものか、国外に出て少しは考えろこの愚か者」

「うう…。でもよかった…」

結局自分の首を絞める結果にはなったが、青年が死なずに済んだと思うと
体の力が抜ける。
倒れこそしなかったが、ようやく青年の方を振り向く事ができた。

「ごめんなさい、私の所為で」

「あんたは何もしてないだろ。忍び込むと決めたのは俺なんだし、
むしろあんたがいてくれたおかげでこの程度で済んだと思ってるよ」

「ううん、多分最初から罰清掃だけだったのよ。変な心配をさせちゃったわ」

「そうだ、すべてお前の勉強不足と思慮不足が原因だ。よくよく身に染みたろう」

「わ、わかってます…」

一番嬉しかったのは青年がカントを責める気がないところだ。
無条件に叱られる理不尽さには腹が立つが無条件に許される歯がゆさは一生忘れてはいけないのかもしれないと心の中で思った。
いつか、青年のために、今度はちゃんとした形で何かをしてあげたい。
今度は盗賊の手引きでは無くてそれ以外の何かを。

「ところでどうやって宝物庫に侵入したのだ?」

「ええと、多分魔道師様だと思うんですけど…」

「特徴は」

「桃色の髪の…」

「「「ああ」」」




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