「なあにこれ」

「チョコ」

「わかる。もらったの」

「うん。俺お前から欲しいからそれお前にやる」

「…よおし、はっぴーばれんたいん!」

「これじゃなくてお前から欲しいの!」

きれいにラッピングされた箱は恐らく店で販売されているものじゃなく、
心臓が飛び出そうなほど緊張しながら渡してきた女の子が
一生懸命手作りしたものだろう。
あっさりとそれを友人へ放り投げて事もあろうに友人からせびろうというその
根性といったら常識的にはおかしいと思われるものだ。
優真はそのチョコレートを押しつけるように悟に返すと
悟はこんなもの、と言いたげに優真から箱を奪い返した。

「いやだよお前が俺に頂戴よ」

「普通は彼女がくれるんだろ」

「なんで俺が彼女なのお前でしょ」

優真が眉間にしわを寄せると悟は心底不思議そうな顔をする。
どうしてそこで不思議に思うのかが優真には不思議だったが次の言葉で憤慨した。

「は?俺ネコじゃねーじゃん」

「うるっせえよそう言う意味じゃねーよ!!大体女の子が
大変な思いしてお前に寄越したのをなんて扱い方してんだ」

馬鹿か!と付け加えれば悟はわざとらしく肩を竦めてため息を吐く。
なにもわかっていないと言われているようで更に腹がたったので
ソファに乗っていた小さなクッションを右手に握って思い切り
その上から目線の顔を殴ってやろうと思った。

「俺がモテて嬉しいの?」

「いや嬉しくない腹立つ」

「俺には優真だけだよ」

「わっすっげー鳥肌立った…やめてそう言うの」

「俺のイケボ馬鹿にすんなよ」

「イケボとかそんなレベルの話じゃなかった今」

すっかり怒りも萎えてちらりと先ほどのチョコのはいった箱を盗み見る。
ほんの少しだけ、これを送った女の子が可哀想だなと思いつつも
さっさとPS3を起動してゲームを始める悟の後ろ姿に安心感を覚えた。
そんな事を言えば絶対に調子に乗るのが目に見えているから言ってやらないだけだ。
決して照れ隠しなどでは無い。

「優真」

「ん?」

「バレンタインのちゅーして」

「バレンタインはチューする日じゃねえよ」








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