話を終わらせて現女王と王である両親に面会したアガタは、
翁への処遇をこれでもかと言うほどそれはそれは厭味ったらしく、罵った。
あまりにも無遠慮に言うものだから目を丸くし、顔を真っ赤にした臣下の誰もがそれを止めようとしたが
女王はそれをただじっと聞き入れるだけだった。
そして一言だけ、アガタと翁への謝罪の言葉を述べるとアガタは
「わかればいい」とだけ呟いたきりそれ以上は何も言うことはなかった。
二人の体調が優れないのを気遣ってそうしたのか、それとも初めからその言葉だけを欲していたのかはわからない。
とにかくそれ以上は翁の話題に触れることもなくその日を終えた。
フォレガータとの結婚の事に関しては本人の意思を尊重させると反対する意思も見せなかったのでウォンネーゼはますます頭を抱えることになったのだが。

「兄上はアガタ様の何が気に入らないのです」

「なんかもう…いやな感じがするからだ」

「どのような?」

「何考えてるかわからないだろ。それから父上と母上にもあの態度。
いくら山の中に住んでいたからとはいえ、あれは酷い。
それから、これは姉上には言うなよ」

ウォンネーゼはソファの背もたれから体を話して前のめりになって
シャンニードへ顔を近づけ声を潜める。
シャンニードは幼さの残る顔を傾けて続きを待った。

「街のやつらに聞いたんだ。あいつの家には結構…その…
娘が尋ねて行ってたって」

「まあ、どこかの誰かさんのようですわね」

「茶化すなよ…」

わざとらしく大げさに驚いて見せたシャンニードに拗ねたように言うと
妹はくすくすと笑う。
彼女は兄を一体どのようにみているのだろうか。

「その件に関してはわたくしも調べてありました。
どの一人も残らずアガタ様に追い返されたそうですわ。
結局、兄上はアガタ様に姉上を取られたくないのですね」

「そう言うわけじゃあ…」

「それではお認めください。アガタ様は立派な方です。だって
あの姉上がお慕いしておられる方ですよ?」

シャンニードは、改めて兄の顔をまじまじと見つめて言った。
彼女もまたノグ国の王家の血筋を引いているだけあって、フォレガータとは違うが
どこか有無を言わせない雰囲気を持ち合わせている。
フォレガータが威圧的なのに対して、シャンニードは緩やかに周りを固めるタイプだ。
ノグ国は女王制なのもあってか、昔から女性の方が気持ちも地位も強い。
一般家庭では夫が大黒柱だが、亭主関白の家庭はごくわずかで、
だからこの国の女には敵わないのだと、男たちは口を揃える。
ウォンネーゼは、おそらく認めることはできても、
好きになれるかどうかの自信だけはまったく持てそうになかった。


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