パーティーが始まるとあたりは更に賑わいをましていく。
受付時間はとうに過ぎたというのにその流れは止まることなく次々と来賓が受付を通っては女王へ挨拶をかわす。
それだけにこの国が諸国から注目されており、且つ外交の際には外せない国なのだと言う事が改めて分かった。
一流の音楽家たちがその場で指揮者の指揮の下に演奏をし、何人かはその曲に合わせてダンスを踊る。

「フォレガータ女王陛下はお忙しそうですね」

「そうだな。はぐれるなよ?」

「子供じゃないんですよ!」

「子供じゃなくても他のやつらに言い寄られたら困る」

「そんなこと…!」

「あーおひめさまー!」

過保護なカズマに今日こそ、今こそ意義を唱えてやろうとリンは意気込んだがその腰を折ったのは小さな女の子の声だった。
リンは声のする方を振り向くとカントが小さな足を一生懸命に動かして走ってきていた。

「きれいだねえ」

「ふふ、ありがとうございます。カント様もかわいいですよ」

「カント、おひめさま?」

「ええ、お姫様です」

「おひめさまのお名前なんて言うの?」

「リン、と言います」

スカートのすそをつまんで翻る小さな少女に身を屈めて名乗るとカントは
にっこりと笑ってリンの名前を呼んだ。
人懐っこい少女がかわいらしく思えてリンはついつい表情がほころぶがそれを見ていて面白くなさそうに眉間を寄せたのは隣に立っているカズマだった。

「おい」

「はい…って、カズマ様…そんな怖い顔していたらカント姫が泣いちゃいますっ」

「……」

「かずまさまカントの事嫌いなの?」

カントが二人の異変に気づき、カズマのズボンのすそをくい、と引っ張りながら
見上げて尋ねると、カズマはしどろもどろになりながら小さな女の子に狼狽えていた。
普段はあまり見られない動揺するカズマにリンは小さく噴き出すとクスクスと笑いながら首を振って見せた。
いつもであれば立場が逆なのだがカズマは少し余裕のあるリンに表情をゆがませる。
妻がかまける小さな子供へ嫉妬しているなどとカントに説明したところで理解されはしないだろうが、それでもカズマは優しい笑顔を向けて貰えるカントがうらやましかった。

「違うんですよ、姫」

「姫ってヤダ」

「え?ええと…??」

カントが言わんとしている事がわからずに困り果てたリンは助け舟にとカズマを見上げたが、カズマもわからず、首を横に振るばかりだった。
さっきはおひめさまと言われて喜んでいたのにどうしたのだろうと悩んでいると
先ほど一緒にいたキリが小さな男の子と手をつないで現れたのでリンは少しほっとして
彼が近づいてくるのを待った。


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