「かあ、さま?」

「紹介が遅れたな、この子がカント、こちらはキリ。私の息子と娘だ」

「カント・ノグ・ほーびねんです!」

「キルッシュトルテニオ・ノグ・ホウヴィネンです、長いのでキリで。それじゃあ」

キリはさっさと挨拶を済ませるとカズマとリンの名前もろくに聞かず、城の中へ入って行った。
まだ挨拶もろくに覚えていなくてすまない、とフォレガータが詫びの言葉を述べるとカズマがすかさず首を振る。
しかしリンが驚いたのはフォレガータに、あんなに大きな子供がいると言う事だ。
フォレガータ自身、カズマ達とそんなに歳も離れていないように見えるのに、さっき現れた少年もまたカズマ達と歳が近いように見えた。
フォレガータがまた歩き始めると二人はそのあとをはぐれないようについていく。
訝しんでいる妻の様子を悟ったのかカズマがそっと耳打ちしてくれた。

「この国は特に王家の人間は長寿らしい。見た目は若くても歳はずっと上だ」

「そうだったんですか…」

こんなにも自分たちのいる世界と違うものなのかとリンは半ば感心して改めて女王の後ろ姿を見つめた。
どこからどう見ても4〜5歳年上としか思えない女王からは少しも衰えを感じない。
颯爽と歩くフォレガータの後をしばらく追っているとある部屋の入口で止まった。
大きな木製の両開きで植物が細部まで丁寧に掘られているその扉の両脇には兵士が二人、立っていた。
兵士は女王が扉の前で立ち止まると、てきぱきと敬礼してから素早く扉を開けた。
ご苦労、とねぎらいの言葉をかけてからフォレガータは部屋の中へ進むと二人に入るように催促した。

「ここが二人の部屋だ。なにか入用があれば遠慮なく女官に声をかけてくれ。
従者の方たちには隣の部屋に入ってもらうがよろしいか?」

「お気遣い、感謝いたします」

フォレガータは、二人を部屋へ案内すると準備があると告げてそのまま退出した。
二人は、自分たちの城と勝るとも劣らない装飾の施された部屋の中を歩き、白と薄い紫を基調とした大きなソファに腰を下ろした。
ソファはふかふかとしていて体が丁度いい具合に沈み込んでいき座っているだけでも気持ちがよくなってうとうとしてしまいそうだった。
しばらくして従者達が部屋を訪れ、立会パーティーのための二人の身の回りの準備に取り掛かった。
リンは同行したマリカの手を借りながら自分たちの城で一生懸命に悩みに悩みぬいたドレスを着て、おかしなところがないかと何度も何度も鏡の前で確認する。
カズマの妻としてせめて不備が無いようにと細心の注意を払うも、当のカズマはいつものように平然としておりすでに着替えも済ませ、そんなやきもきしたリンの様子をうかがっては楽しんでいた。

「気は済んだのか?」

「うう……」

「心配するな」

「カズマ様の言うとおりです!確かにフォレガータ女王陛下はお綺麗な方でしたけれど、リン様はリン様のかわいらしさがあります!」

「マ、マリカさん…」

真剣な表情で力説してくるマリカの威圧に負けたのもそうだが、それ以上に
自信のない自分をこんなにも励ましてくれる二人の存在がリンにとってはうれしかった。
リンは、深呼吸を一つすると覚悟を決めたのかうなずいて言った。

「ありがとう、私は、私らしい自分でいればいいんですよね」

はにかむように笑って見せるとカズマが突然立ち上がってリンを抱きしめ、
そうしてリンに気づかれないように小さく周りにいた従者達を追い出すように手で払った。




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