11

存分に食べ歩きをして城へ戻ると女王と王がこれでもかと
言うほどに臣下に叱られていた。
しかし二人はけろりとしており、ぶちぶちと小言を言いながら後をついてくる
口うるさい臣下達を一蹴してカズマとリンの帰り支度の手伝いを言い渡した。
蜘蛛の子が散るように四散に消えた臣下にため息を吐いたフォレガータは
支度の準備が整うまで庭でくつろぐよう促した。
庭へ行くと相変わらずそこはたくさんの花がゆらゆら揺れていて
思わずため息が漏れる。
するとアガタがいくつかの花の苗や種を持ってきてリンへと手渡した。

「これ、あげる。こっちは水多めにあげて、こっちは気にかけなくても
勝手育つから」

「ありがとうございます…!」

「実がついたらお茶にしてそこのお坊ちゃんに飲ませてあげるといいよ。
疲れをとる効果もあるから」

「はい」

「カズマ」

「はい」

「水の精霊が言った事を忘れないでいたらたぶん大丈夫だよ」

「?」

アガタがそう言うとカズマは少し驚いたような表情を浮かべて
すぐに自分を戒めるかのように小さく頷いた。
精霊が言っていた事とはなんなのかわからないリンとマリカは
お互いの顔を見合わせて首を横へ傾けるしかできなかった。
そう時間も経たないうちに帰り支度が完了したと若い侍女が伝えに来た。
短い間のノグ国訪問もこれで終わりとなる。
せめて最後はきっちりと挨拶をしようと思ったリンだったが
寂しさが勝ってしまいほんの少しだけ涙を流した。
優しく頭をなでてくれたフォレガータにこれ以上甘えてはいけないと
必死に笑顔を作って馬車へ乗り込む。
初めは厳しい女王だと聞いていたが蓋をあけてみればこれほどに
優しい女王はいないのではと思うくらいの人物だった。

(あんなにしっかりはできないけれど、私もいつか)

マリカやカズマに慰められながらリンは小さくではあるが決心した。






















「そういえば、カズマ様、水の精霊になんて言われたんですか?」

「……………………別に、大した事じゃない」

「?」






















『貴方は妃を見守る場面とそうでない場面がまだはっきりつかめていないようだから
お気をつけなさい。貴方の妃は危なっかしいところはあっても子供ではないのだから』






(わかっている。だから目が離せないのだ)

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