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パーティーが終わり、次の日には視察の名目で城下町などを見て回り
国の流通システムなどの説明を受けた。
物資の搬出入には常に国が指定した兵士が検査官として付き添い、
危険なものはないかなどのチェックをこまめに行っている。
稀に他国から訪れる商人から厳しすぎると悲鳴があがるが、
それには偶然近くにいたノグ国の商人たちが誰とも言わずに丁寧に指導し、
他国の商人へ理解を求めていた。
兵士たちはと言えばノグ国の商人を信頼しているのか
彼らがこの荷は問題ないと説得するとあっさりと検問を通してしまっている。
長い間その関係は崩れることなく兵士は商人を、商人は兵士をお互いに認め合って
いるのだった。
カズマとリンは自国でも実践できればと大層感心した。
ここまで強固に信頼性を築き上げるのにはかなりの労力がいるはずだ。
流通以外にも応用できるとすれば国はますます発展することができるだろうし、
民の生活も潤う。

「すごいですね…」

「そうだな」

「これはほんの一部にすぎないがまだまだ課題が山ほどある。
我々も今以上の努力をするべきなのだが殿下、いずれ是非あなた方の国を訪問させて頂いてそのヒントを掴みたいのだ」

「是非いらしてください、我が国王ともども歓迎いたします」

そのあとは、市街地の色々な店を見て食べ物を買って歩きながら食べて回った。
女王と王、賓客であるカズマとリンと侍女のマリカだけで視察を行うと
聞いた時は護衛もつけないのかと驚いたが自ら品を選び、購入して
美味しそうなスイーツをリンへ手渡したフォレガータは
下手に護衛がいるとやれ毒見だ、やれはしたない、やれ庶民の食べ物など口にするべきでは
ないのだと口やかましくてなにもできないのだと教えてくれた。
受け取ったリンはその女王らしくない振る舞いにどことなく
親近感を覚えて笑みをこぼす。
同じようにマリカにも手渡すとマリカは大慌てで受け取り、リンへと近づいた。

「わ、わたしも頂いていいんでしょうか…!畏れ多くも女王陛下に…」

「たぶん大丈夫です。フォレガータ女王は気さくな方のようだし」

カズマはと言えばあまり好みのものではなかったらしく
それを感じ取ったアガタから食べられそうなフルーツを受け取っていた。
少しは仲良くなったようで真剣にそのフルーツのおいしい食べ方をアガタから教わっていた。

こうしているとまるでただの民になったような気分になる。

「姫にはこのようなはしたない真似はお嫌いかもしれないが、
たまにこうして民の声を聞いたり感じたりするのも悪くはないと思うのだ」

「はしたないだなんて…!とってもおいしいですし、楽しいです。
それに陛下の仰ること、私もよくわかります」

「それならばよかった。王子はとてもよい方を伴侶に迎えたようだ」



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