その年は特に水不足に喘いでいた。
大人もさることながら子供も死にものぐるいで一緒に水場まで移動して水を運んだ。
ただし、その水を使用する『権利』を持っているのは住民権を所有している人達だけ。
街の住人と認められない者にはそれらの恩恵は与えられず、
略奪するか、権利を所有する人間の恩恵を分け与えて貰うかであった。
サミレフとエラーはどこにも属せずにいた。
略奪するほどの力はなく、こっそり盗めるほどの技術も無く、
恩恵を分け与えて貰えるだけの知識もない人脈もない。
ただカラカラになった喉をヒューヒューと鳴らして突き刺す暑さを
建物の影で耐えるしかなかった。

その二人が現れるまでは。

男が雨を降らせればいいと言った。
女が地を固めなければ意味が無いと言った。

だから女が砂地を固めて土を造り、その上に男が大量の雨を降らせた。
二人は次々に植物を植えていき水場を作り上げた。
水場の権利を持たない人々はもうこれ以上出るとは思っていなかった水分が
涙となって自分の体から流れ出た。
それを見ていた住民権を持つ人々も限りの有る今の水場よりも二人の男女が
作り上げた水場に興味を持ち始めた。
それに目を光らせた男と女は条件をつきつける。

『今後一切住民権を振りかざして独占しようとしないと誓え』

有無を言わせない雰囲気であったが異論を唱えるのは
愚かな富裕層だけであった。
住民権を持っていても貧しい人々にはあまり配分が回ってきていなかったのだ。
そうしてようやく住民権は撤廃され、あらゆる自然はあらゆる人達が必要最低限なだけ
自由に使えるようになった。
見違えるように暮らしは豊かになり街は驚くほど大きくなった。
街がやせ細った原因がなくなると人々の往来も多くなっていく。
人々は男と女に感謝していた。
特にサミレフとエラーは感謝のしようもないぐらいだった。
誰も寄せ付けない雰囲気の男がサミレフには不思議と柔らかく接し、
同じ双子のエラーにもそうしていたが特にサミレフの方がお気に入りになったらしく
何かと呼びつけては手伝いをさせた。
サミレフは一番最初に水を与えられ、力の使い方を少しだけだが教えて貰い、
助けてくれた彼の役に立てるのならと必死に駆け回った。
弟のエラーも同じようにしていたがその相手は女の方だった。
双子は男と女をそれぞれ親か神かのごとく敬った。

だが、男と女には帰る場所があり、特に男の方が遠い国から来たのだという。
サミレフは別れを惜しみに惜しんでついて行くと言って泣いて駄々をこねた。

『ここにいて、きっと、…多分来ると思うんだけど。多分。サミレフと
同じような金髪の男の子が来たら助けてあげて欲しい』

だからサミレフはその街に留まって金髪の少年を待ち続けた。
自分と同じ金色の髪の。








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