本当に不思議だ。
自分でもよく分からない。
よく分からないけれど彼女の横をすれ違っていくきれいな女の人なんかよりも
ウルズラのほうが輝いて見える。
これをなんと言葉で表せばいいのだろうか。
何かの花に例えたらいいのだろうか、
素晴らしい景色を当てはめたらいいのだろうか。


「…自信がないんだ。俺には何もないし…タクトみたいに沢山の人と話せるわけでもないし、だから俺がウルズラの事が好きでも君が喜ぶような言葉も言ってあげられないし」

ぽつぽつと独り言のように呟いたらウルズラは一瞬眉をひそめて首を傾げた。

「えーと、あの。…聞き間違いで無ければ今私は告白されているのかしら?」

誰から告白されるなんて今回の一件以外ウルズラには経験の無かった。
周りの女の子達が頬を赤くしながら楽しそうに恋愛の話をしていた時も
なんとなく自分には関わりの無い事だと思っていたぐらいだ。
それにキリの言う好きも恋愛の好きなのか友愛の好きなのか図りかねるくらいに
当たり前のようにその口から出て来たので思わず尋ねてしまった。

「うん。なんだっけ、その…雰囲気?なんてのも作ったりするのだってよくわからないし…。タクトはそう言うの多分上手いと思う。結構周りをよくみているし、それに」

「ちょっと待って。それで貴方は私を好きなのに何に落ち込んでいるの?
自分に自信がないから?それにどうしてそこでタクトが出てくるの?」

「俺もよくわからない」

「自分の事なのにわからないの?呆れた。それなら自信を持てばいいじゃない、それにキリには素敵なところが沢山あるわよ。私の事助けてくれたじゃない」

「下心があった」

「…そんな真顔ではっきり言われるとなんだか怒る気も失せて笑っちゃうわ」

「ごめん…」

あんなにも行動力のあったキリが嘘みたいにしおらしくなってしまっている。
どうして目の前で泣きそうな顔をしているのかも理解に苦しむ。
自分達の横をすれ違う女性達が先ほどからキリに熱い視線を送っていると言うのに、
キリはまるで自分の魅力というものに鈍感だった。
勿論キリの良いところが容姿だけじゃないのはもう十分承知しているが
口べたなところを差し引いたとしてもどうして『自信が無い』に繋がるのかがわからない。

「それでその、返事を」

「えッ、あ、そうね、うん…えーとうん。ありがとう。一緒にいる時間は短いけれど
キリに会えて良かったわ」

「じゃあ、もし俺が迎えに来たら一緒に来てくれる?」

「えっ」

「やらなきゃいけない事が済んだらまたウルズラを尋ねるから、
今すぐに返事をくれるのが難しいのならそれまでに考えてて欲しい。
迎えに来た時に俺の事を好きでいてくれたなら一緒に来て欲しいんだ」

「なんだかキリの言う事って突然すぎて頭が混乱する」

「ごめん。でもきっと迎えに来る」

「わかった」

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