14

男が戻ると王はなんとわがままなキティの条件をすべてのむと答えたそうだ。
それに一番驚いたのはキリだが、そこで態度を崩してはいけないと
必死に平然を装い、着替えてから王の御前へ向かいますと返事をして男をまた
王の元へ返した。
その隙に大急ぎでウルズラのところへ戻り事の次第を説明しようとしたらどう言う訳かタクトも合流していた。
城へは来ると言っていたがどうやって城の中に入り込むかまでは聞いていなかったので
兵士の格好をしているのを見て非常に彼らしい潜入の仕方だと感心しながら
キリは着ていたものを剥ぐようにして脱ぎ捨てて、ウルズラが用意していてくれた水桶で忌々しい化粧を洗い落としてまたいつものキリになった。

「…なんだか勿体ないわね」

「変な事言うなよ…」

じとりとした目でキリが睨むとキリが脱ぎ捨てた衣装を拾って丁寧にたたみながらウルズラは嫌味や、からかうつもりはなく濁りのない瞳でキリを見つめて肩を竦めた。

「変じゃないわよ、可愛かったもの。王様が見初めるのも無理ないってくらい」

「そうだよなあ、あの流し目されたら王様じゃなくても俺でも勘違いするかもなー」

「タクトはどこにいたの?」

「王様の隣に立ってた護衛の兵士役でした」

「は!?なんだよそれ!!聞いて無いぞ!」

「まあ、言ってないからな」

「私は聞いていたわよ。場所までは聞いていなかたけど」

どうしてウルズラには教えて、自分には教えてくれなかったのかと言う事はさておき、
ウルズラとは反対ににやにやして明らかに慌てているキリが面白くて仕方ないタクトは
とどめの言葉を吐く。

「お断りさせて頂きますの辺りはあれはやばかったな〜」

「うあああああ!ヤメロ!!」

「え〜?どうしたの?」

「聞かなくて!いいから!」

すさまじい剣幕でタクトの胸ぐらにつかみかかったが力一杯首を振られるタクトは
それだけでは笑いが収まらないようでまだニヤニヤしていた。
見られただけでも恥ずかしいのにその上からかわれてはまたったものではない。
ぶう、と頬を膨らませてふてくされるウルズラの方が可愛いんだとか
ネジの抜けた文句も頭から吹っ飛んでウルズラの興味をそがせるのに必死になった。

「なんでよ。私だってキリの可愛いところ見たいわよ」

「そう言うのは…いいよ見なくて…」

「沽券に関わるからか」

「俺にそんなもの無いよ」

「知ってる」

「なあに?二人だけで」

「なんでもない。それより、アレで王様が引き下がってくれればいいけどなあ」

「それなら大丈夫。さっき従者の方が見えて城に上がる話は白紙にしてくれって言われたわ。よっぽど王様はキリの事気に入ったのね…」






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