15

白鷹の目つきが変わり、さっきまで怒鳴り声をあげていた盗賊たちが静かになった。
何事かと身構えていると白鷹が一歩一歩踏みしめるように進み、キリの肩を勢いよく掴んだ。
びっくりしたキリは体を硬直させて目を見開いたが、イオウも同じように身動きできずにただその光景を見守るしかなかった。

「お前!!!あのアガタの弟子か!」

「はい…」

「あのクソ餓鬼、元気なのか?!そうか〜!あいつも弟子をとるようになったのかあ!」

「あの…痛いっす…」

「ああ、すまんすまん。嬉しくてつい。昔あいつの家を襲ったことがあるんだ。
俺が手負いでな。それなのにあいつは俺を匿ってくれたんだが…そうか…弟子か…度胸のあるところはあいつに似てるなァ…」

白鷹は、白い歯を見せて豪快に笑いながらキリの頭をぐしゃぐしゃと撫でまわした。
ぼさぼさになった頭をのろのろと直しながらどこか嬉しそうに笑うキリを横目にイオウは、その場の雰囲気が変わったのを感じ取っていた。
改めて事情を説明すると白鷹は二つ返事でキリについて行くと申し出てくれた。
仲間の何人かが罠だと反対したが白鷹はそれらをきっぱりと否定して、仮に罠だったとしてもキリについて行くと言った。

「白鷹さんが捕まりそうになったら俺が逃がします。絶対」

「言うじゃねえか」

「来てもらうお礼…って言ったら変ですけど」

「師匠と違って礼儀正しいやつだな…。まあいい急ぐんじゃねえのか?」

「その前に、イオウさん」

キリがイオウに向き合うとイオウは神妙な面持ちでうなずいた。
何を聞こうとしているのか察しているようだ。

「もし、白鷹さんを捕まえようとするなら俺は全力で抵抗します。できれば今回は見逃してほしいんですけど…」

やや間があってからわかりましたと答えが返ってきたのでキリはほっと胸を撫で下ろす。
この場でこの質問をするのは卑怯だとは思ったがここを出てから尋ねたら違う答えが返って来そうで怖かった。
時間が迫っているとキリは白鷹を急かして宿屋へ戻ることにした。
何人かには背中越しに白鷹に何かあったらただじゃおかないと釘を刺されたが
キリ自身白鷹に危害を加えるつもりはこれっぽっちもないので軽い調子でわかったと答えた。
それを見て白鷹がやはり度胸があると笑い飛ばしたが、それからの白鷹はあまり笑みを見せなくなった。
兵士たちに顔が知られているからかあたりを警戒しているようだ。
サクサクと雪道に足跡を残すのすら嫌がっているようだがそれでもキリの後をしっかりとついて歩く。
やがて宿屋へ戻ると白鷹を見た店主が目を丸くして驚いたが悲鳴をあげるようなこともなく、静かに受付を通してくれた。
恐らくイオウがいたおかげもあるのだろうとキリは考えた。

「ほんとにつれてきたのか!」

「えっ?」

「いや…うん、その、テストは合格だ…本を寄越せ」

「ありがとうございます!」

西の魔術師は、どこか不機嫌そうに北の魔術師から貰った本をキリからとりあげて
無造作に広げるとぶつぶつと何かつぶやきながら開いたページの上で手をかざしている。
予想より早く戻ったキリへ近づいたタクトは、ちょっぴり意外そうに言った。

「早かったな」

「うんアガタのおかげだ」

「友達か?」

「はい。親友です」

あまりにも素直に言葉が出たのでタクトが照れてようやくキリもなかなかに恥ずかしいことを言ってしまったのだと気が付く。
幼いころは、気にしたことなどないのだが歳を重ねていくにつれてそれを言葉にするのが照れくさくなっていた。
それを見て白鷹はまた豪快に笑い声をあげて笑ったが今度はキリではなくタクトの頭をぐしゃぐしゃに撫でていた。
そうしている間に北の魔術師から貰った本への書き込みが終了したのか
西の魔術師はまだ不機嫌そうにキリへ本を押し付けてから魔術師は、白鷹をキッと睨みつける。

「お前!俺の魔石を返せ!」

「魔石…?お前この間のやつか。魔術師だったのか」

「うるさい!ソレが無ければ俺は何もできないんだぞ!」

言うや否や魔術師は白鷹が腕に着けていた腕輪を無理やり外した。
白鷹は、自分の腕輪がとられても特に怒り出すこともなかったが、それほどまでに
大切なものだったとは、と感心して狂喜する魔術師を見つめる。

「自分の魔力を石化させる研究の第一人者だったんだけど肝心の魔石を盗られてたところに俺たちが現れたんだって。魔力がなければただの人だしな。魔術師って」











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