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「教育する気なんて無い癖に…何
教育者ぶってんだよ!」
「あるよ失礼な…あんたらが真面目に人の話聞かないからでしょう」
とは言え、アガタの授業は生徒達にとって退屈なこの上ないものだった。
他の授業では手から炎をだしたり、風を操ったり、呪いのかけかたを勉強するのに、アガタの授業はこの植物園で花に話しかけろだとか、動物の世話をしろだとか、山に自然観察にでかけたりだとか。
しかも教科書など一切使わないのでみんな、彼の授業は退屈でつまらなくて好んで話を聞くような生徒はいない。
とはいえまがりなりとも四大魔術師の一人であることには間違いないので無下にもできない。
そんな彼を師としているキリは変わり者扱いされているのが事実だった。
「だーって花に話しかけたって喋るわけねえじゃん、なあキリ?」
「え?俺やってるけど」
「え!?聞こえんの?!」
「聞こえないけど。アガタがやれって言うから」
「お前よくやるな…」
「花は聞こえないけど動物ならなんとなくわかるし」
さすがに弟子と言ったところかとタクトが溜息を吐くとキリはにこりと笑う。
黙っていれば美少年なのにキリはこの変わり者の師匠の所為で自分の価値を半分ほど落としていた。
「はいはい。午後から自由授業でしょ?さ。お勉強しようか二人とも」
「エーッ!俺エコ先生の授業に…!」
「じゃあタクト一人でそっち行けよ。俺アガタのとこいる」
「はあ!?…わかったよ…俺もいるよ…」
エコ先生とは派手な魔法を好む事で有名で、特に男子達からは特に人気がある先生だった。
しかも彼の教える魔法は実戦向きで王国軍に志願しようと考えている生徒はエコ先生の授業をよく受ける傾向にある。
「はーいじゃあ二人仲良くお勉強」
そんなこと言ったってどうせまた花に水やってぼけーっとして終わりだろうに、とタクトは頭上高く生い茂る南国風の木々を見上げて肩を落とした。
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