キリは風の壁を解除してイタチの左側へ一目散に走った。
タクトはそのままイタチへ真正面から突っ込んでいくとイタチは迷わず
タクトを標的として唸り声をあげながら地面を蹴る。
大剣を鞘から引き抜き、その切っ先から柄の根本までゆっくりと
赤い炎をまとわせたタクトはイタチへ切りかかる。
突然炎が現れたものだからイタチは驚いてとびかかるのを止めて地面を強く踏みつけた。
しかし、地面には真っ白な雪が降り積もっており、足に力を入れた瞬間に
雪で滑ってイタチはバランスを崩した。
キリはこのチャンスを逃すまいと体を半分捻り、槍を構えると回転をバネにして
イタチの首筋へ勢いよく振り下ろした。
イタチは衝撃を受けてドスンと音を立てて地面へと倒れこむ。
その衝撃で周りの木々に積もっていた雪がドサドサと一緒に落ちた。

「はー……やったか…」

「疲れた」

「嘘つけ。息切れてねぇくせに。俺の方が切れてんじゃんよ」

大きな剣を鞘へ仕舞いながらタクトが恨めしそうに言った。
キリはタクトが言った通りけろりとした顔で気絶しているイタチを見下ろしながら
親友へ近づく。

「暫くは起きないだろうし、行こう」

「なあところでこいつって一匹だけ?」

「…そう言う恐ろしい考え方やめてくんない?」

「進軍の基本だよ」

うげえ、と顔を顰めるキリに今度はタクトがさらりと言ってのけると
タクトはやや警戒した様子であたりの気配を伺いながら歩き始めた。
アガタには勿論そう言った警戒する必要性も教えてもらったことには教えてもらったが
さほど重要性を見いだせなかったのでそのあたりはキリはタクトよりも疎かった。
反対にタクトはと言えばもともと兵士志願なので戦術や陣形、敵地への侵入などには
特に強いのだ。

「いないみたいだな、行くか」

「うん」

「アガタならうまくやるんだけどなー」

「タクトもすごいよ」

「ほめたってスープは出ねぇぞ」

やや暫く進んだところで今までとは違う道ができてきていた。
明らかに人為的に雪が道の端へ寄せられていてうんと歩きやすくなっている。
これは、人が行き来している確かな証拠であった。
街が近いのだと確信して二人は暖かいスープが目の前にちらつくと足早になって道を進んだ。
すると道は緩やかな下り坂を作っていてその先には今まで白しかなかった視界にふさわしくない、茶色の大きな壁が広がりだす。
街を敵から守る擁壁だ。
壁のそばを通りぬけて、街の中へ入ると、ノグとは規模は小さいが商店なんかが立ち並んでいる。

「着いたー!」

「とりあえずさっさと宿とろう…!」








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