ユルドニオ国は占星術と芸術の国、ノグ国は軍事の国、そうして、コーツァナ国は商業とオアシスの国であり三国はとうの昔、互いに睨み合っていた。
大きな戦争が行われていた時期もあった三国はやがて長く続くいがみ合いと争いに疲弊していき、軍事の国でもあったノグ国が一番最初に協定の手を差し伸べる。
圧倒的な兵力、武力、戦術を持ちながらも争いを辞める呼びかけをしたのは他でもない初代ノグ国王の一人娘でもあるテレージア・ノグ・フォウヴィネンであった。
それ以来ノグ国では繁栄と平和の象徴として男性の王ではなく、女性の王制をとり続けていく事になる。
ノグ国は、地図の上では東に位置し、その大国を囲むようにして小国のメルンヴァなどがある。
南にあるユルドニオは穏やかな音楽と広い海に面した豊かな土地が特徴だが陸地に進むに連れて砂漠が広がっている地域があった。
そしてそれらの国々から円で囲まれるように世界の真ん中にコーツァナ国はあった。
そのコーツァナ国の中心には大都市化した首都がありそこで中央の魔女が生まれたとされている。
キリ達は、今丁度ノグ国を出て北のメルンヴァに近い国境にいた。
メルンヴァと言えば先日隊長がアガタに決闘を申し込んで返り討ちにされた国だがノグ国にも劣らない武術の達人が多く住む国と聞く。

「タクト、今どの辺?」

「えーっと…この通りを真っ直ぐ行けば…の筈なんだけど」

筈なのだが、タクトが指さす先は石畳の細い路地であったが、数百メートル先に
壁が見える。
地図はもっと先に家があると示しているので現実と紙面上の情報の誤差に頭を捻っていた。

「…確かにこの先なんだな?」

「うーん。だけどアレ、どう見ても壁だよなあ…」

念を押して確認するキリに自信なさげに答えるとキリは、ずんずん壁の方へ進んでいく。
慌ててタクトがついていくが壁の前に立つとやっぱり壁は壁で、
試しに触れてみてもひんやりとした石の感触しか手のひらに伝わってこない。

「ここだ」

「は?壁しかないじゃん」

「じゃあ同族しか通るなって事だろ?属性は関係あるのかな」

キリがにやりと笑ってぺたぺたと壁を触る。
タクトも魔術を学んでいるが剣術の補助程度にしか習っていないので
そう言った探索能力系は特に本職中の本職であるキリには到底敵わなかった。
人差し指で石の壁に円を描くとなぞった部分が緑に光り出して線を引いていきやがて
魔法陣を浮かび上がらせる。
魔法陣は赤く光を放つとすぐに消えてしまった。

「炎系」

「よっしゃ、離れてろ」

魔法剣士は魔術師のように魔法陣を作り出す事が出来ないので
杖や剣、グローブなど身につけたり持ち歩いたりするものを媒体に魔法を使う。
タクトは使い慣れた剣を鞘から引き抜くと壁に向け、火の気の無い白銀の剣から
渦巻く炎を作り出すと一気に放った。
壁は、炎が触れるとじゅうじゅうと音を立てて溶け出しやがて人が一人入れるくらいの扉を作り上げた。
炎が収まるともとからそこに扉があったかのような作りで、魔法で扉を隠していたらしかった。

「おおっ、出た」

「じゃあ行こう」

「えっ!?ちょ、心の準備…!」

「ごめんください」

「ノックぐらいしろ馬鹿!!」






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