1日目は、野宿をした。
その辺で寝っ転がって一夜を過ごすのは苦ではない。
小さい頃に森の中に入って探険と称し、迷子になった経験がこんなところで生かされるとは思わなかったが。
2日目は道中魔物に襲われた。
そこでタクトとキリ、お互いの武術の力量を知り、お互いの弱点を話し合って補う事に決めた。
なるべくなら体力を必要以上に使う魔術を使わずに旅をするにこした事はないのだ。


そして三日目。
目の前には野党がいる。
どうしていいかわからない。

「こう言うのってやっぱりやりすぎるとまずいんだろ?」

「そりゃあ……どうしよう、力加減までは習って無かった、俺」

「アガタはなんて言ってたんだよ」

「…アガタは…容赦してなかった。多分それじゃまずい、よな…」

そう言えばと以前、アガタが向かってくる野党を遠慮無しにバッタバッタと地面へ
叩きつける光景を思い出してキリは唸った。
二人の目の前に現れるなり、金目の物を置いていけと叫んだもっさりした野党は、
返事もなく小声でボソボソと何か話し合っている子供にイライラし始めた。
彼らは特に短期で、横暴で卑怯だが欲しい物さえ手に入ればそれ以外には無頓着であるのをキリもタクトも知っている。
だが、何せ持ち出してきた旅費諸々のお金は最低限しか持ち合わせていない。
仮に大人しく渡したあと、どこかで暫く旅費を稼ごうにも今の二人は時間が惜しかった。勿論今も。

「…渡す?」

「それは困る」

「じゃあ」

タクトが鞘から剣を引き抜く。
それに習ってキリが背中に刺していた槍を構えて二人はお互いの柄をぶつけてガチンと音を立てさせる。
それが合図だった。

「「やりすぎないように」」

頭数五人の野党は、突然向かってきた子供二人に虚をつかれたが
すぐに持っていたむき出しの剣を構えて振りかざす。
キリは、がら空きになった男の胴体めがけて槍の柄を横から叩き込むと
ドッと鈍い音と共にごつごつとした岩肌へ男を剥ぎ払う。
体の細さに似合わず二人の男の剣を一緒に受け止めたタクトは、
そのまま力任せに二人を押し出した。
男達がバランスを崩して後ろへ倒れこんだ隙にもう一人に回し蹴りを食らわす。
様子を伺いつつ襲いかかろうとしていた残りの一人がキリとタクトのあまりの迫力に
その場から動けないで立っていた。
背中を合わせて怯えた様子の男にキリとタクトが構えて見せると大あわてで
森の茂みへ逃げていく。
残された男達もお互いを支えながらようやく立ち上がるとうう、とうめき声を上げながらそそくさと茂みへ消えていった。


「…成功?」

「多分」

「…あー、しんどい」

野党を追い払うのに成功したものの神経が削られ、ほんの少しの動きだったと言うのにへとへとになってしまった。
こんなのがずっと続くかも知れないと思うだけでげっそりしてしまう。

「…そう言えば、町に賞金稼ぎの換金所あったな…そう言う意味での旅費稼ぎなら…いいかも」

「あー。掴まえるって思ったらちょっとは気が楽かもな」






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