腰に二本剣を携えて少年がふんぞり返っている。
ぽかんとしている男三人の表情にタクトが次第に表情の雲行きを怪しくする。

「なんだよ」

「や、何してんの?」

「護衛だよ、ご、え、い!」

「プッ、見習い魔法剣士が?」

「ウッセーッ!」

軽装備ながらも既に魔法剣士の風格がようやく見え隠れし始めたようなタクトに
アガタは思わず吹き出した。
まだまだひよっこにしか見えず、かわいらしいものだが
どこからか森へ戻ると言う話を聞きつけ大急ぎで準備をしてここに来たのだろう。

「タクトにいさまも来られるんですか?」

「エムシさまもご一緒なんですね。俺がお守りしますよ」

「ありがとうございます」

もじもじしながら小さく会釈したエムシの頭をキリが撫でてやると
エムシは嬉しそうに兄を見上げる。
エムシもまた、タクトのように小さな剣を腰に下げ、小さな王子様の格好をさせられていた。
6歳のエムシは他の同じ年頃の子供と比べ、やや体が小さく
体と同じように気持ちも少し小さい子供だった。
小鳥や兎のような小動物とはふれあった事はあるものの
ポチのように人間よりも大きな動物を目にする機会が少ない。
馬にすら怯えているような子供だ。
森までの長い距離を歩き、辿り着いたらポチに怯えてしまうのではないかと
アガタは内心冷や冷やしていた。

「大体、キリの家に金目の物なんて無いのに、どこのバカが空き巣に入るか見て見たいし!」

「あんた人の家になんつー物言い……」

「早く行かないと日が暮れるよアガタ」

「ああ、うん。そうだね」

既に太陽が真上にある今この時間から森まで向かうのだ。
のんびりなどしていては、帰りが遅くなってしまいまたフォレガータに雷を落とされてしまう。
予想外の増員ではあるが遠足のようで賑やかになったのは確かだ。
4人は石畳の道を歩き厳重に警戒されている城の門を抜け、城下町へと進んでいった。
城下町へは時々遊びに行くのでこの独特の賑やかさには慣れている。
エムシも何処にどの店がある、くらいに町の事は把握していて暇を見つけては
アガタやキリと一緒に遊びに来る事が多い。

「あー、まだカント様のお披露目で賑やかだな」

「カント様にお土産持って帰らないとね」

「ただでさえゴネてたしなあ…カント様」

ニヤニヤとわざとらしく言ってやるとタクトはじとりと魔術師二人を睨む。
そうして3人より一歩先に出て歩くとキリはおもしろがってタクトと歩調を合わせようと大きく踏み出す。

「あのさあ、別に気にしなくていいよ」

「うるっせ!親に怒られんだよ!」

「カントまた怒るぞ?」

「本当はキリにだってちゃんと敬語とか使えって言われてんだからな!」

「俺には使わないのに?」

「アガタはいいんだっ」

「どんな理屈だよ」

こうして一緒に肩を並べて冗談を言い合っていても身分の違いは無くなってなどいない。
ただ、魔術師親子はそんな事微塵も気にしていないからこうして接する事ができるだけだ。
どこに行こうと、王族になろうと彼らはきっと変わらないとしても、
周りはそれを許してくれない。








[ 23/120 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -