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「庭師とは言え、もう少し客人に対しての態度と言うものを教えるべきでは無いか?」

「申し訳ありません、あの方は…」

広い廊下を歩きながら後ろから話しかけられるも器用に体を向けて答える。
隊長であるエリクは溜息混じりにあの不愉快な態度の男を思い出し、首を横に振った。
庭師とは言え、他国の城の者には出過ぎた失言だったと自分で反省したのだ。

「いや、こちらこそ。他国の庭師とは言え、出過ぎたもの言いだった。すまない」

「それが…」

「ディルク、ねえアガタ…っと」

廊下の曲がり角にさしかかった所、ひょっこり現れたのは魔術師の弟子であり、息子であり、女王陛下の第一子。
金色の髪を揺らし、目の前に現れた鎧を纏った隊列に少し驚いたのか、キリは一瞬後ずさりした。

「キリ様、メンルヴァ国、特別警護隊、隊長のエリク・ベート様です。ご挨拶を」

「えっ?」

「背筋を伸ばして」

「『フォレガータ・ノグ・ホウヴィネンが第一子、キリ・ノグ・ホウヴィネンですはじめまして』」

ディルクに助けて貰ったとは言え、まだまだこの挨拶の仕方には慣れない。
これでよかったのかどうなのか、相手の表情や態度を見ても彼らはにこりともしないのでキリは思わずディルクに助けを求めるように視線を泳がせた。
ディルクはにっこりと笑って頷いてくれたがまだ不安はぬぐいきれないでいた。

「初めまして。キリ皇子。私はメンルヴァ国、特別警護隊、隊長のエリク・ベートと申します。本日は母上であられるフォレガータ女王陛下からのお招き、心から嬉しく思います」

「いいえ…えーっと、失礼します」

ようやく笑顔を見せたエリクに軽く会釈してキリは半ば逃げるように廊下の隅を走り抜けて行ってしまった。
彼の行動にぎょっとしたのは隊長だけでなくもちろん兵士達も同じでなんと言い表していいものか迷っているとエリクより先にディルクが口を開いた。

「キリ様は幼い頃から下町の民の子供と一緒に学業を学んで居られたので、どうにもその癖が抜けないようなのです」

「そうだったのか、まさか会釈されるとは思わなかったから驚いた」

「あのお方は身分を気になさらずに物事を見てとらえるお方ですので」

「成る程。女王陛下の教育方針は素晴らしいようですね」

「ありがとうございます」

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