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長らくのお説教が終わり、すっかり歩けなくなってしまった娘を抱えて、中庭を通り抜けると鎧を身に纏った兵士達がぞろぞろと馬を連れて馬屋へ向かうところだった。
あまり見慣れない光景にああ、今日は晩餐会があるのだと改めて認識してげっそりするのをアガタは止められなかった。

「どこの人ですか?」

「あちらはメンルヴァ国、特別警護隊の方々です」

「ふうん」

いまだにこの男の対応にはどう受け答えすれば正解なのか、聞かれた使用人はわからなかった。
ぼーっと空を眺めていたかと思えば何かの気配を感じ取って厳しい目つきになる。
すぐにいつもの呆けた表情に戻りはするが警戒をしているのは見ていて分かる。
女王はそんな彼を知っているのだろうか。
他の使用人はアガタを『恐ろしい魔術師の弟子』としか見ていないようだが自分と、女王の子供達の世話役の下女達は彼を別の視点から見ている。

「とうさま、寄り道しているとまたかあさまに怒られるよう」

「それはまずい」

「ああ、すまない、そこの」

庭の土で泥だらけの服を気まずそうに見下ろしていた男と、使用人の男が小さな子供を挟んで並んでいると庭師とその子供と使用人としか見えなかったのだろう。
兵士の隊長であろう男が寄って来て声を掛けるとアガタはディルクよりも先に返事をした。

「女王陛下にお目通り願いたいのだが、王間へ案内してはくれないだろうか」

「ああ、王間。えーとあっちですよ。ここを真っ直ぐ行って」

「わたくしがご案内致します」

歯切れの悪い返事と道案内に隊長の男が少し顔を引きつらせた。
ディルクは空気が変わったのを感じ取ってアガタよりも一歩前に踏み出すと軽く礼をし、右手を奥の廊下へと向けた。
押し込まれるようにアガタとカントは廊下の奥の影へ身を移し、ディルクと隊長の後には兵士達がゾロゾロと付いていく。
勿論兵隊だけあって、きびきびとした動きだった。
すれ違い様、ディルクからは目配せを受け、隊長からはなにやら厳しい目つきで睨まれたがアガタは彼らが通り過ぎるまでそこから動かなかった。

「すごいね、へいたいさん」

「そうだねー。俺はなりたいと思わないけど」

「とうさまは魔術師だから」

「そうだね。さ。着替えに行こうっか」

「うん。わたし、今日はピンクのドレスがいいです」

「えー。今日はとうさまと一緒に青にしようよ」

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