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「どこに行っていた!バカ者!」


「怒られちゃった」

「おかあさまごめんなさい…」

もたもたしていたのは娘のカントとアガタが鳥を追いかけ回していた所為で、決してキリとエムシの所為じゃない。
それなのにこの連帯責任と言わんばかりの正座は一体なんなのだろうか。
すらりと伸びた足を肩幅に広げ、両手を腰に当てたフォレガータはすでに正装に着替えており、いつ客人が来ても失礼の一つもないように準備を整えていた。
見本としてこうあるべきだと妻から散々に小言を言われているアガタはそれがいつ終わるのだろうと正座した膝の上に乗っている自分の手をひたすらに見つめている。
キリはそんな父親をちらりと横目で盗み見てはなさけないと溜息を小さく漏らした。

「キリ。お前も今日は一日私と一緒に挨拶してもらうぞ」

「ええっ!?」

「表向きはカントのお披露目だが、お前の紹介もしたい」

「いや、いいから!いらない!」

「決定事項だ」

「ううっ…」

きっぱりと言い切った女王を見上げて、彼女が王なのだとありありと思い知らされたキリはそれ以上反論できない自分が悔しいというよりも情けなくて仕方がなかった。
なにせ今隣ですっかり肩を落としている父親とまるで変わらないのだから。

「アガタも、そろそろ王族でいる事に慣れろ」

「こればっかりはなあ育ちがなあ」

「そうやってやる気がないからキリも真似するんだ。大体、親と言うものは」

「フォレガータ、そろそろカントは解放してあげようよ今にも泣きそう」

「かあさま、足がいたい」

フォレガータの小言を遮り、アガタは隣で必死に泣き出すのを堪えて震える小さな肩に視線をやると、女王は厳しい眼差しのまま幼い娘を見下ろす。
そして吸った息を吐いた音が聞こえたかと思うと低く、しっかりとした声で答えた。

「…『罰は誰にも等しく』だ」

((鬼!))

魔術師親子は一国の女王はとても厳しい人物なのだと改めて気づかされた。

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