馬を走らせること一時間、ようやく城下の街に辿り着くとにぎわいがすぐに見て取れた。
レンガ造りの領地の関所の入り口には数多くの旅商人や、自分たちと同じような騎士、それから領地を守る兵隊がいる。
いかにこの国が栄えているかが伺え、イオウは改めて背筋を伸ばして辺りを見渡した。

「メンルヴァ国、特別警護隊、隊長のエリク・ベートだ」

「紋章、お名前共に確認いたしました、どうぞ」

馬上から名を名乗り、関所の兵士に服の腕についた紋章を見せると、兵士は持っていた資料をぺらぺらとめくり、指さし確認して頷いた。
確認した事を隣に立っていた兵士に告げると閉ざされていた木製の扉がゆっくりと開いていく。

眼前には整備された住居が建ち並び、高価そうな品がディスプレイされた店が広がる。
庶民が利用する市場は右に続く道の方にありぎゅうぎゅうに詰められた印象を受けるがだれもかれもが笑顔が絶えず、気さくに話しかけてくる。

「賑やかですね」

「そうだな」

「隊長、時間ってあります?俺学院に行きたいんですけど!」

「お前なあ…観光に来てるんじゃないんだぞ」

「ははっ似たようなものだろう、みなも回りたいところがあるならまわるといい。
ただし、一度城に向かって馬を預けてからだ」

街の中では馬車は通るものの、こうして直接乗馬して移動するものは外部からきた兵士くらいだ。
ただでさえ他国から来る兵士は目立つのにさらに馬に乗って移動していては街の人間にも迷惑になる。
エリクは浮き足立つ部下達を柔らかく戒め、城下を見下ろすノグ国の王宮を目指した。

「フォレガータ王のご子息とご息女は今回初めて…公の場に出られるのですか」

「私は2〜3度お目にかかった事はあるが…そうだな、公の場はこれが初めてだ」

「次期ノグ国女王か…」

「フォレガータ女王に似て、美人なんだろうな」

ははっ、と笑い声を上げながらメルンヴァ国の兵士達は王宮へ向かった。

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