世界はいくつかの国に分かれていてその中でも戦の国のノグ国、商業とオアシスの国のコーツァナ国、そして占星術と芸術の国のユルドニオ国は三大国として世界の中心にいた。
三国に寄り添うようにして小さな小国があり人々の生活は支えられている。
この三大国がかつて、大規模な戦争を行っていたのはもう200年も前の話であった。


「隊長、もうすぐですか?」

「ああ、あれだ。あの町の中心にある大きな城がノグ国の王宮」

目前に広がる景色は故郷とはまた違い、とても美しい。
イオウは隊長が指さす大きな建物を緑が生い茂る小高い丘からじっと見つめる。
全体的に石材でくみ上げられた城壁と家が立ち並ぶ古風な国だがその規模はやはり想像以上である。
自国がいかに小さいかを見せつけられた気がしてイオウは溜息を吐いた。

「急ごう。会食に遅れてしまう」

「はい」

隊長は馬の手綱をはじき、数人の部下を引き連れて丘を下る。
細長い道が一本だけ城下町へ続いていてその道をひたすらに馬で駆け抜けた。

「イオウ、ノグ国の魔術学院だ」

「え?」

茶色の髪の男が指さす先に大きな植物園が見える。
器用に馬を平行して走らせながらイオウはベルンハルトの言う場所を見つめる。
ノグ国には4大魔術師の一人、アガタがいるところで今回彼らの目的はノグ国との親交をより深めるものであったがイオウが一番気になったのはこの国にいる魔術師だった。
そんな、国の王に仕えるべき位置にいる魔術師が一国の女王と結婚した時には世界中が驚き様々な噂を立てたものだが
それももうずいぶんと前の事になる。

(…女王と結婚した魔術師…呪われた魔術師の弟子…)

悠然とした態度で馬を走らせる隊長の後ろ姿を見つめ、イオウはその言葉を繰り返した。
呪われた魔術師の弟子。
アガタはいつでもそう呼ばれ、アガタの師匠の魔術師は呪われた魔術師と忌み嫌われていた。

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