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「くあああ……」
「狐ってば酷いねえ」
「今はみのるだよう」
「ああ、そうだっけね」
一人の女子生徒がくすりと笑って近づいてきた。
風になびいた髪がふわふわ浮いてぼーっとした表情で女子生徒を見上げれば女子生徒はおもむろにみのるの頭にくっついているとんがった耳を掴んだ。
掴まれていない耳をぴくぴくと器用に動かすみのるは居心地が悪いのか表情がだんだんと不機嫌になっていく。
「ニンゲンって馬鹿よ」
「だから勉強しているんじゃないの?」
「そう言う馬鹿じゃないわ」
「うーん。でも秋太は違うと思う」
「みのるの主さまもそう言ったの?」
「主様はなにも」
この時間はどの学生も午後の授業の筈だが二人は屋上でのんびりと会話を続ける。
まるで違う世界に放り込まれたような二人はゆっくりと流れる空の雲を見上げていた。
所詮、狐の主も狐なのだと女子生徒はやや冷ややかにみのるを見下げ、耳を放してやればみのるがにんまりした表情で見上げる。
「なによ」
「きっと好きになる」
「分かった風に言わないで。ただの使いの癖に」
「そんな使いに付き合ってる梟が本当は優しいって俺は知ってる。だから、梟は絶対秋太の事好きになるよ」
「あんたのスカスカの脳みそから搾り取られた言葉なんてたかが知れてるわ」
むう、と今にも頬を膨らませそうな梟は踵を返して入り口へと歩き出す。
そんな小柄な後ろ姿へみのるはそんな事はないと弁明しようとしたが彼女は聞く気がないようで、さっさとドアを閉めて行ってしまった。
今から授業へ戻っても10分程しか勉強でやしないだろうに、それとも今自分がしていたように昼寝でもするのだろうか。
色々考えたが梟が人前で眠る事は考えにくかったので首を振ってそれを否定した。
「先に鹿に会わせた方がいいのか」
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