学校へ行くといつもの教室にいつもの授業風景が広がる。
今教師が立っている場所でみのるが狐の姿でぐったりしていたのなんて嘘のようだ。
秋太は夢であって欲しいと願いながらちらりとみのるがいつも座っていた
空の机へ視線を移す。
淡々と出席をとる先生は何事も無かったかのようにみのるの名前をすっ飛ばして
点呼を続けていた。
つまりみのるがいない事になっているのだ。
それが一番正しいのにどうにも腑に落ちない。
秋太はほおづえをつきながら放課後までの長い時間をだらだらと過ごした。
放課のチャイムとほぼ同時と言って良いくらいのタイミングでフクロウがあらわれ、
秋太と西崎をひっぱりだした。
学校を出たところで夏生を呼べとフクロウが急かしたので
秋太はしぶしぶ夏生に電話して大至急神社まで来るようにと告げた。
夏生は秋太よりも体力があり、高校よりは神社までの距離が近いとは言え、
走ってきたらしく神社で待っていると息を切らして表れた。
我が弟ながらなんと言う青春の表れかと思った。

「じゃあちょっとここで待ってなさい」

「俺も行く」

「会話している時間が勿体ないって言ってるの」

「あ、ハイ…」

びしっとフクロウに言われた三人はなんだか落ち着かない様子で
フクロウを待った。
5分ほど経った頃フクロウが祠に入った時よりも数倍も機嫌の悪そうな表情で
出て来た時には何があったのかと思わず口が滑った。
案の定睨まれただけで何も教えてくれなかったが
手に持っている物を差し出すといつもの少しだけツンとした彼女に戻った。

「なにコレ。神主様が持ってるヤツ?」

「幣(ぬき)と言うのよ」

「それからコレ」

「狐のお面」

「言葉がわかると言ってもお前はほとんど人間に近いからね。
念のためそれもおつけ」

「…わかった。ところでコレ何に使うの?」

幣を軽く振りながら秋太が尋ねるとどこからともなく獣の鳴き声が聞こえてきて辺りの
葉っぱががさがさとそれはもう、何事かと思うくらいに大きく音を立てて揺れる。
すると大きな風呂敷がぬっと現れ、勢いのついたままこちらへ向かってきた。

「なんだよこれぇッ!?」

「えええ!?アレってあれ…獅子舞!?」

「うっわああこっちくんなよお前ら!?」

「ふざけんな助けろよ!」

なんとなく、追いかけてくるものからは逃げたくなるもので3人は神社の境内を
あちこちに走りまくって獅子から逃れる。
ばらばらに逃げればいいものをどう言うわけか三人とも同じ方向に逃げるので
三人がいっぺんに追いかけられてしまう。
フクロウはと言えばいつの間にか神社の鳥居の上にちょこんと座ってその様子を観察している。
鳥め、と秋太は心の中で悪態ついた。

「どうやって…!?」

「幣を持ってるうちはあんたの言う事聞くわ」

「…まじか」

「マジだから早くしてよ。埃が立ってうっとうしいったら」

「やっやめろ!お座り!」

三人を追いかけていた獅子はぴたりと動きを止めるとうごうごと
移動しながら秋太の前でお座りをする。
獅子が耳をぱたぱたと動かすと、たてがみの毛がふぁさふぁさと揺れた。
大きな目をじっと秋太に向けて大きく生えそろった歯をむき出しにし、
真っ赤な顔を突きつけてくる。

「おお…すげえ…なにそれ」

「…みのる復活アイテム……」

「そのお面、俺の媒体と同じ?」

「厳密には違うけども似たようなものね」

土埃がおさまって地面に降りたフクロウが言った。

「夏生にはないの?」

「お前、弟を危ない目に遭わせたいの?」

軽蔑の眼差しをフクロウに向けられたが秋太はへこたれなかった。
むしろこちらからフクロウに同じような軽蔑の眼差しを向けてやる。

「…俺は危ない目に遭うのか」

「遭わないでどうやってみのるを助ける気よ」

フクロウが言っている事も一理ある気がするがなにか納得いかなかった。



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