食事がてら自分が寝ていた間の話を春子、西崎、夏生からそれぞれ聞いた。
父親はまだ仕事から帰ってきてはおらず、今日はなんだか忙しいと連絡が来たらしい。
それはいつもの事なので気にも留めなかったが
フクロウだけならいざ知らず、まさか家に狸とムジナも上がり込んでいたらしく、その話を聞いてなんだか不思議な気分になった。
三人はそれぞれにやる事があると秋太が目覚める前に森へ帰り、
西崎は泊まり込む予定だったと聞かされ秋太はホウレン草のおひたしを口に含んで
暫くもぐもぐと口を動かしていた。
いい加減飲み込めと弟に促されてようやく自分の口に食べ物が入っているのに気がついたような風だった。

「夏生の龍神を引っ張り出す」

ぽつりと呟いたので思わず聞き逃しそうになったが明らかに的を得た言葉では無かったので三人は首をひねった。

「秋太大丈夫?まだ具合悪いの?」

夏生が心底馬鹿にしたような声で言ったが秋太は機嫌を損ねる様子も無く続ける。

「かあさんか西崎やり方しらない?」

「いや、そもそも言ってる意味がわからないんだけども…」

「私は知らない。みのるかフクロウなら知ってるかもしれないけれど」

西崎は首を振ったが母親の春子はやや間を置いてから答える。
それからどうして秋太がそんな事を言い出すのか気になって尋ねた。

「そんなもの引っ張り出してどうするの?」

「…あのさいろんな事隠してるみたいだけど、隠してどうなんの?大体
隠してるからいろんな事が複雑になってんじゃないの」

秋太の家の食卓はいつも賑やかだ。
小さな喧嘩も絶えないがそんなものは次の瞬間には笑って済ませる程度のものなのだ。
それが今日は珍しく秋太も春子も本気なのである。
特に秋太はいつになく母親に腹を立てているようで弟の夏生が困惑しているのを
西崎が少し不安そうに見つめていた。

「夏生の中に閉じ込めんのをやめろ。だから死神だって怒るし、狸だってムジナだって狐が隠してるなんて言うんだろ」

「ね、ねえ秋太ちょっと説明して欲しいんだけど…」

「そうだぞさっきから意味わかんねぇぞ二人とも」

暫くにらみ合っていた春子と秋太はどちらともなく視線を逸らして
水を飲んだりご飯を食べたりと自分を落ち着かせようとしているのがわかる。
のんきにメシなんか食ってんじゃねーよ、と苛立ち始めた夏生をなだめて
西崎は辛抱強く二人が話してくれるのを待った。

「狭間にいるときに死神に聞いた。神社の裏の狐が昔龍神を掴まえて母さんの子供…夏生に閉じ込めたって。だから山の神が怒って山へ降りて来ないって」

「おいおい何神様とか…」

夏生が漫画かよ、と呆れたように呟いたのも無理もない話だ。

「閉じ込めてるわけじゃないの。龍神は弱っててかくまう必要があったの。
だから一時的に夏生の中で守ってるのよ」

「だったら社とか…そう言うちゃんとした場所ってのがあるんじゃねぇの。なんで夏生なんだよ」

「夏生が丁度よかったからよ」

「丁度良いってなんだよ、あんた自分の子供なんだと思ってんだよ!?」

「五月蠅いわね!夏生は龍神が入ってるから生きてんのよ!夏生の魂は龍神の力でなんとかそれを保ってんの!文句あるの!?」









[ 59/63 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -