一つにしなくては、別々にしていてはいけない。
ひどくそう言う気持ちになって辺りを見渡すが何もない。
探しているものが見つからなくて不安で身を引き裂かれそうな気持ちになる。
やっとみつけた、と思って手を添えたものは獣の死骸で
秋太はとっさに身を引いた。
どうしてそこに獣の死骸があるのか理解できなかった。
ただ死骸の傍らに青年が座っていてにいいと白い歯を見せて笑みを浮かべているのだけが不気味であった。

秋太は目を覚ましてすぐに水を欲して頭を抱えていた。
コップに水を汲んだ母親がそれを手渡すと一飲みか二飲みで飲み干してしまう。
普段そういった野蛮さを見せるのは弟の夏生の方だったので母親の春子はいくらか
驚いて空になったコップを受け取った。

「ハラヘッタ」

次に秋太が希望したのは食事である。
何がいい、と尋ねると息子は肉がいいと短く答える。
体だけでは無く胃も弱っているものだと思っていたらそうでも無いらしい。
少しだけ呆れた様子でそれでも母親は息子が目覚めたのが嬉しいのか
はいはい、と部屋をでて食事の準備に取りかりに台所へと向かった。

「秋太」

「西崎、みのるを連れてきたいんだけども」

「うん」

頷くと秋太は神妙な顔で言った。

「飯食ったらついてきて欲しい。…お面作れないの?」

「作った方がいいなら秋太がご飯食べてる間に作っておくけど」

「えっ、お前飯食ったの?」

「食べる気しなくて」

「…食えよ、お前なんか顔白いよ」

相変わらず食の薄いやつだ、と溜息交じりに言ったら西崎から反論された。

「秋太が心配させるからだ」

「えっごめん」

「悪いと思うなら俺よりも白いその顔なんとかしてよね」

そんな事は信じられないと鏡を手にして自分の顔を覗き込むと
今にも眠ってしまいそうな青白いが飛び込んできて、表情をゆがめると
その青白い顔も同じ表情をしたので間違いなく自分の顔なのだと確認できた。
ほんの少しだけ落ち込んでいると弟の夏生が夕飯の支度が出来たと二人を呼びに来た。

「秋太、西崎さん、飯だってー。大丈夫?なんか幽霊屋敷みたいなんだけど」

どちらも負けず劣らずな青白い顔を眺めながら心配そうに尋ねる弟は
全くもって健康そうであった。
なんだかばからしくなって二人はお互いに肩を竦めて部屋を出る。
食卓には母親が作った料理を並べていて湯気を上げているご飯がこれほどに
美味しそうに見えた事は無かった。
弟用のどんぶり茶碗に大盛りのご飯と比べれば可愛いものだが
普段よりは何割増しかでご飯が茶碗に盛られている。
つまり沢山食べて力をつけろと言う母親の無言の圧力である。
二人はさすがにこの量を食べきるには相当の労力が必要と胃をさすったが
文句も言っていられない。
早くこの情けない顔色をどうにかしてみのるを助けに行かなければならないのだから。



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