フクロウを連れ出して、狭間からも出てくると秋太はどっと疲れたのかその場に座り込む。
土がついて汚いとかそんな事は気にする余裕もなく、むしろ地面の暖かさがとても懐かしく思える。
手のひらで軽く撫でたら砂と土といろいろな生物の鼓動が感じられた。
もちろんそれは地面以外にも石畳の石であったり、神社の柱であったり。

「疲れたの?」

「うーん」

「目を直すといくらか楽になるよお」

そう言えばまだあの鋭い眼光のままだったのだと気がついて手についた砂を払ってからまぶたを撫でた。
再び目を開くと先ほどよりも疲れはなく、すんなり立ち上がることも出来たのでこの狐の目を使うのはかなり体力を消耗するようだ。
そうそう簡単には使用できないとわかったし、狭間の切れ目の見つけ方も初めの頃よりは上達したしと収穫は大きい。
ただ、いいことばかりでは無かったが。

「そう言えばさっきの子は?」

「あの男?ああ、犬の事?」

「犬??」

「精霊なのですって。うるさいしよく吠えるし。…私もよくわからないけれど」

話していた本人もわからないようで珍しく口ごもりながらはっきり口調で説明するので
秋太もあまりそれ以上は追求しないことにした。
何せ別の世界に行くこと自体説明のしづらいと言うのに他の世界での理など自分たちに理解できるはずも無かった。

「とにかく戻れてよかったね!」

「まあ、鷹はまた追いかけ回してくるだろうけれどもねえ」

「…フクロウ」

「何」

「バレンタインのチョコ俺によこせ。鷹にまた追いかけ回されたら俺にくれてやったって言えばいいだろ。
もしかしたら鷹が俺の方に矛先向けてくるかもしれないし」

フクロウもバレンタインのチョコレートを渡すと言うことがどう言うことかわかっているので聞き間違えたのでは無いかと一瞬首を傾げた。
秋太は神妙な面持ちできっぱりと言い切る。
勿論フクロウの身の安全の為だけでは無くてちょっぴりチョコレートが欲しかったのが本音だったがそれは口が裂けても言えない。

「それじゃあ秋太が危ないんじゃあない?」

「それくらいは何とかする」

「大丈夫!秋太は俺が守るから!」

「わかった…でも私」

「大丈夫だってそれまで鍛える!」

どんどん話を進める秋太たちが心配なのかフクロウは不安そうにしている。
やはりそれほどに鷹の力が強いのだろうか。


「そうじゃなくて、私チョコレートなんて作れないのよ」






マジで?






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