大声で二人を呼ぶ鹿の元へ急いで走って行くと、境内から少し外れた木と木の間にそれはあった。
小さく歪んでいるがみのるが言っていた通り近づくにつれてなにかとてつもなく嫌な感じがする。
居心地が悪いと言うか、気味が悪いと言うのか。
とにかく全身でそこは危険なのだと警告を放っている。
こんなに近づきたくないと感じるのに面をかぶった西崎に怯えていた程のフクロウがさっさと突っ込んで行ってしまうなんてとても信じられない。
みのるがためらうこと無くその切れ目を腕を伸ばして無理矢理入り口をこじ開けたら入り口は丁度みのるの顔が二つ分入るくらいの大きさまで広がった。

「何か見える?」

「ううん…フクロウもこっちを探してくれていれば座標くらいは合わせられるんだけどねえ…」

「何座標って」

「あっ座標」

「えっ」

首を傾げた秋太の背後に回った鹿が突然秋太の襟首を掴んで黒い切れ目の穴へ力一杯に押し込んだ。
全身が穴の中へ落ちないようにと鹿と、恐らくみのるが体を引っ張ってくれているらしいがなんの説明も無いまま行動を起こされたので慌てて両腕を入り口にかけて踏ん張る。

「何すんだよ!」

「フクロウ見えない?!」

「え?!真っ暗だし…って言うかなんか言ってからやれよ!」

「まあたぶんフクロウが君の座標合わせてくれるから、そしたらすぐにわかるよお」

「だからなんだよ座標って!」

「目印だよお。それがあれば帰ってこられる」

灯台のようなものだろうかと考えながら暗闇の中を上半身だけ乗り出して秋太は目を細めて探す。
穴に入る前はあんなに怖かったのだが入ってしまえば温い浴槽につかっているような感覚に陥る。
時々暗闇の中に風が吹いて体が持って行かれそうになるがその度に鹿とみのるがひっぱってくれるので不思議と恐怖感はわき上がってこなかった。
視界の端にときどき光りが差すので目で追うがすぐにそれは消えてしまう。
注意深く見つめているとひときわ大きな光を見つけて秋太は思わず声を上げた。

「すげー今光った!!」

「それに近づいて!」

「どうやって」

「手を伸ばしてさっき俺がしたようにこじ開けたらいいよお」

物理的にこれ以上手を伸ばすなど到底無理だと首を振ったら意識の問題だとみのるは言った。
伸びている錯覚を自分自身に起こさせて光までたどり着くようにすれば
必ず光まで届くらしい。
秋太が暗闇の中にある小さな光めがけて必死に手を伸ばした途端、急に引っ張られる感覚に襲われて自分たちがいる切れ目の入り口ごとどんどん光の方へ吸い寄せられていく気がした。
光はやがて大きくなりついに狭間の切れ目が見えるぐらいに近づいていく。
急いでその光の切れ目を掴まえるて、無我夢中で両手でその切れて目を力一杯こじ開けた途端、あの暗い狭間の空間が消えて光に包まれた。
秋太たちのいる狭間は光の狭間と直接繋がり、光の狭間をのぞき込むと黒い服を着た少年と見慣れたセーラー服の少女が立っていた。




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