立ち話もなんだから、とみのるが言うのでてっきり場所でも移すのかと思ったら
秋太もまだまだ考えが甘かったようで4人は、神社の石段に並んで腰を降ろすことになった。
気の利かない男だとムジナが呟いたがみのるは聞こえないフリを決め込んで、
ムジナが座る場所のほこりや砂を自分の尻尾で軽く掃いてきれいにしてその隣に腰を下ろすとぽんぽんときれいになった石段の上を叩いた。

「秋太君はこんな男になってはだめだよ?」

「はあ…」

「それで。人間の子供を巻き込んでどうするって?」

「巻き込んでなんか。もともと人間も関係のある問題だもの。
協力してもらうだけだよ」

「そう、じゃあ私たちも彼らに協力を仰いでもいいって言うことね?」

「…好きにしたらいいんじゃない」

「ちょっと待って。協力はもちろんするつもりだけど、君たちの喧嘩に巻き込まれる気はないよ、俺たちは」

声色は落ち着いているのだがお互いの言葉の端々にどこがとげがあり、ずっと黙っていた西崎がひょこ、と体を屈めてみのるとムジナをけん制する。
大人の会話を聞いているようで秋太は、自分がここにいるべきではないのではないかと感じて落ち着かない。
そんな二人の会話に西崎もしっかり加わっているので尚更疎外感を感じるのだった。


「陰陽師くんは、賢くてあのおバカな狸にはちょうどいいね。元来狸は頭のいい生き物なのだけど」

「そんなこと言っちゃあ、狸に叱られるよお?」

「お前たちは賢すぎて気持ちが悪いんだ。ずるがしこいと言ってやろうか?
下手に知恵がまわるから神を隠すのもうまいんだろう?」

「隠してなんかいないよ。神様がお隠れになってるんだ。自分から。俺たちが神様をないがしろにしたから」

「少なくとも私たちはないがしろになんて…!」

ムジナは言いかけた言葉を飲み込んだ。
どこかに心当たりがあるのかもしれないがそれ以前に先ほどから頻繁に神社の後ろの方を気にしている。
視線をちらちらとそちらへ向けてはまた戻しを繰り返していて落ち着かない様子だ。
みのるのみならず、狐の子の秋太とそれから神社を見守り続けている大狐の眼前ではムジナも大きな動きはできなかったのだ。
それがただの言葉であろうとも失言一つで『彼ら』は身構えて警戒をしてくる。
今は、これ以上三勢力の関係を悪化させている場合ではなかった。

「よくわかんないけどみんなで一緒にやった方がいいんじゃねぇの?」

「…そう簡単に片が付く問題なら今頃それぞれの頭が額を詰めて話しているさ」

「頭の固い奴らが詰められないなら俺たちが詰めればいいだけの話だろ!お前らだって頭固すぎなんだよ!」

「秋太く…えと、それはちょと言い過ぎじゃ」

「なんで!?お前もムカつかねぇ?!」

西崎は、詰め寄られるときょとんとした顔で秋太を見つめ返した。
どうやら彼と秋太の沸点が違う位置にあるらしく、更には西崎自身の中に『ムカつく』と言う言葉がないようだった。
大きくため息を吐いて肩の力を抜くと突然後ろから頭を撫でてくる手が伸びてきた。
みのるがいつのまにか背後に移動していて秋太の頭を子供にするように撫でていたのだ。
みのるはどこか嬉しそうに笑っていて振り向いて目が合うと更に撫でる手に力を込めて秋太の髪の毛をくしゃくしゃにしてしまった。

「秋太のね、そう言うところが好きなんだよ俺」

「はぁ?気持ち悪い!」





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