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クラスの女子がどうやって西崎と仲良くなったのかと時々尋ねてくるが
どうやってと言われると秋太は返答に困った。
仲良くなったとは思うが仲良くなるのにやり方があるのかわからないからだ。
話せばちゃんと答えるのだから話しかければいいと女子に伝えると女子は返事を濁す。
そこでなぜ濁すのだと心の中で溜息をついて秋太は女子に別れをつげてさっさと屋上へ上がった。
学校の屋上にはちょっとした新緑スペースがある。
正確には園芸部が丹誠込めた野菜畑なのだがそれ以外にも
小庭になっているようなところもあってこの学校は特別に屋上が開放されていた。

「遅い」

「なんだ、フクロウも来たのか」

「いちゃ悪いの?」

「彼女のお弁当、手作りなんだって」

「えっ、作れるの?」

「失礼ね。何の為に学校に家庭科って授業があると思ってるの」

ああ、と妙に納得した秋太は西崎の隣に座った。
西崎の弁当も結構豪華で母親がきっと一生懸命作ってくれたのだろう、
きちんと彩りも考えられていて見ているだけで空腹の腹が鳴る。
昨日の怯え方が嘘のようにフクロウは西崎と平気で会話をしながら
昼食をとっていた。
結局自分が向かわなくてもよくわかんないものが西崎だってわかったんじゃないかと
思い返しながら考えていると最後の一人のみのるが眠たそうな顔で現れた。

「おはよー」

「もう昼だっつの」

「あっ春子さんのおべんとー」

「なんで俺がお前の弁当も一緒に持って来なきゃなんねえの?」

「春子さんのお弁当が美味しいから?」

「違う、今話しているのはそこじゃない」

秋太が鞄からもう一つ弁当箱を取り出してみのるに手渡すと
みのるは、待ってましたと弁当を広げてまず匂いを確かめた。
弁当がすっかり冷めてしまっているのでそれだけが残念と黄色の卵焼きに箸をつける。
それでも口に運んだみのるは幸せそうな顔でもぐもぐと味わうように食べ始めた。
いつもなら昼休みには他の生徒も沢山屋上へ上がって昼食を取るのだが
どういう訳か今日に限って自分たちだけだった。
園芸部の畑は小さな実をつけていてあれはおそらくキュウリとトマトだと思われる。

「今日は俺たちだけにしてるからね」

「お前の仕業かよ」

「とりあえず、聞きたいのは狸が何をどこまで進めているかって事ね」

「今は確か神様が降りる場所を探してるって言ってた。隣の山ではそれらしき場所がなかったから今はここの山を中心に探索してるって」

「降りる場所?」

秋太が聞き返すとみのるが頷いてアスパラの肉巻きを頬張りながらもそもそと口を動かしながら答える。

「兆しがね、あるんだ。神様が降りる場所って言うのは」

「人間で言えば降りるって言葉よりも生まれるって言葉を使った方がいいかもしれないわね。木の幹から生まれるのよ。神様は」

「まじで?」

神様なんて本当はそこらじゅうにいて、ただ自分たちに姿が見えないだけなのかと思っていた。
例えば今も、校舎の避雷針にでも立って秋太たちの話を聞いているようなそんなイメージだ。
まるで桃太郎とかかぐや姫みたいだとふと考えて桃太郎もかぐや姫の話も小さい頃にあんなに繰り返し読んだり話して聞かせて貰ったのに話の半分ぐらいしか思い出せないのに気がついて秋太は一人自分の成長を感じていた。

「じゃあ鹿にでも探して貰えばいいじゃん」

「鹿は木の皮を見ると食べる事しか考えなくなるから探索には向かないわよ」


「向かないわよねー?鹿って馬鹿だものー?」

自分たちしかいないと思っていたので四人は驚いて一瞬体を硬直させた。
そして声の主を捜す前にふとフクロウの方を見るとフクロウが肩をわなわな振るわせながら食べ終わった小さな弁当箱を握りしめて俯いている。

「ああ、」

「カラス…!!」







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