「おかわりぃ」

「あんた人ん家に来て遠慮しないわね」

「人の飯は美味いんで」

3杯目のご飯のおかわりを申し出たみのるへ秋太の母親は溜息混じりに言いつつも
茶碗を受け取りまた最初と同じようにご飯をよそった。
呆気にとられているのは秋太は勿論、弟の夏生もである。
父親である冬夜はといえばもう食事などすませて晩酌に舌鼓を打っている。

「で?どう?秋太は」

「んー上々ってところですね」

「何よもう、はっきりしない返事ね!」

「まだ一日も経っていないのにどう答えて欲しいんですか」

「…それもそうだね」

茶碗を手渡して秋太の母親は冬夜の食器を片付け始めた。
二人(?)の漫才を眺めながら黙々とおかずを噛んでいると
ふとある疑問が浮かんでくる。
確か、みのるは人間で言えば随分年上のはずで、
それこそ父親と母親よりもずっと年上で、それなのに年下の
母親には敬語を使うのだ。
冬夜へはしっかりタメ口だと言うのに、だ。

「あの…さ。母さんいくつ?」

「は?今年で40だけど」

「みのるいくつ」

「俺はぁ、…えーっと…」

「秋太」

「何」

箸を置き、両手を使って一生懸命に自分の歳を数え始めたみのるをよそに、
春子がキッと息子を睨みつける。
なにかに気が付いた母親は、何も言わせないようにと目力だけで威圧しようと言うのだ。

「ああ、何、母さんの歳?父さんと同じ設定だよ」

「設定とかって何!?」

丁度お茶を飲んでいた夏生が盛大にむせてあっけらとした態度で言う父親にツッコミを入れた。
本当に、家族の会話としてはあまりにも普通とかけ離れている。
家族の中では夏生が一番今の現状から取り残されるくらいに普通の人間として育ったので尚更だ。
冬夜が一番混じりっけの無い人間の筈だがどうにも考え方が普通の人とは違う。

「いいねぇ、人間の家族」

「…そう言えばみのるの家族って…」

「俺以外は普通の狐だったから死んだよ」

事も無げに言うのでそうなのかとあっさり納得してしまった秋太が
ごちそうさま、と箸を置いた時みのるがまたおかわりを要求する。
すっからかんになった炊飯器を指さしていよいよ春子が爆発するのは時間の問題だった。


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