来た時のように何事もなく森を抜けて、いつもの石段へ戻ると、
外はすっかり暗くなっていた。
びっくりするぐらいの明暗に秋太は、思わず辺りを見渡すが、
後ろも上も前も横も真っ暗ないつもの…と言うかつい最近来たばかりの森だった。

「おかえりー」

「はあ…」

「怖かった?」

「こえーよボケッ!」

乱暴に手を放すと湿っていた手のひらの水分をズボンにこすりつける。
水分がなくなった手は風にあたるとひんやりと冷えて、指先が冷たくなっていく。
すでに夏に近い季節だと言うのに手を擦り合わせて体温の上昇を促そうとする行動が
おかしくてしかたなかった。
頭で考えているよりも怖かったのだと気が付いた時は、
みのるがさっさと来た道を戻りはじめていた時だ。

「秋太ー、置いていくよー?」

「お前どこに帰るつもりなの?」

「えっ秋太ん家」

「は?」

「大丈夫ー春子さんは知ってるよう、あと冬夜くんも」

「マジで…」

「さっきねぇ、メールしたから」

「メールできんの?!」

「秋太できないの?」

「この時代に出来ない方が問題じゃね?」

「それなら俺たちだってそうだよう」

つまり動物たちも進化しているという事なのだろうか?
その辺の高校生となんら変わらずに片手で器用に折りたたみの携帯を
開いて素早く指を動かしていく。
まだ最新の携帯でないところがリアル感が漂っていて腹立たしい。
両親がみのるの事を知っているならば説明の必要も問題もないだろう。

「今日の夕飯はねぇ、」

「馬鹿言うなよ楽しみにしてんだよ」

「秋太かわいいねえ」

「お前ウゼェ」

神社の石段を下りて、ようやく土でない、アスファルトで舗装された道に足を踏み入れる事ができた。
すると不思議な事にさっきまで起こっていた事が夢のような気がして、
後ろを振り向いて森を見上げたが森はいつものように風に揺られて時々葉っぱがこすれる音と虫の鳴き声くらいしかきこえなかった。
話のなりゆきで一緒に家へ帰る事になったので二人並んで家路につく。
街灯に照らされたアスファルトの道には虫たちの陰が時々落ちてきてはどこかへ飛んでいく。
ふと一匹の小さな蛾へ視線を移した時、森の方から特徴のある鳴き声が響いた。

「ふふっ」

「なにっ?!」

「フクロウが明日秋太と会うの楽しみだって」

「はぁ?」

「あっ怒られた」

ホウーと独特の鳴き声がまた聞こえて来て今度は困ったような顔をする。
動物の言葉がわかる秋太でも動物が意識してそれを拒めば聞こえない。
今まさにその状況で人型であっても本来動物であるみのるにはその意志が
ちゃんと伝わっているようだ。

(こういう時はなんか、閉め出されてるなーって思うな)

不意に小さい頃の事を思い出して寂しい気持ちになったがすぐにそれを振り払った。







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