盗賊達を処刑場の職員に預け、もう一つの目的である
ドラゴンの涙をほしがっていた少女の捜索にとりかかった三人はまずフルフルが
少女を見かけた場所とストラスが変質者呼ばわりされた場所へと向かった。
当たり前だがそこには少女の姿はなく、近隣の人たちに話を聞いても
見かけたと言う情報は得られても
少女がどこへ行ったかまではさすがに分からなかった。
同じく、ドラゴンの涙を使用するのが流行っているのかも
尋ねてみたがそんな話はどこへ行っても聞かなかった。
つまり、ドラゴンの涙をほしがっているのは少女と先ほどつまみ出した盗賊達だけである。

「処刑場で罪人が脱走したんでしょう?物騒よねえ」

話を聞かせてくれたおばさんがため息混じりに言ったが
そこに恐怖はみられず、どちらかと言えば退屈な日常に非日常が舞い込んできて
話題ができてうれしいと言った風だった。

「そうですね。まだ捕まっていない罪人もいるでしょうから、気をつけてくださいね」

「あんた達も気をつけなさいよ」

そんなやりとりをしてから三人は通りがかったカフェで休憩をとることにした。
カフェの中にはエンケラドゥスのような獣人や、人間でにぎわっている。
どうやら人気のあるカフェのようだ。
三人は店員にそれぞれ注文をするとテラス席へ移る。

「だめだね〜。もうこの街にいないのかなあ、あの女の子」

「そうですね。まあ今は罪人が脱走しててこの街も物騒だからそれならそれで安全でしょうけど」

「ところでストラスはどうしてその少女に変質者と言われたのだ?」

「え?なんでしたっけね…細い路地で何かしててそれで声をかけたんですけど…」

「何か?」

「なにをしてたかまではよく見えなかったんで声かけたんですけどね…。あ。そういえば」

「なんだ?」

「男の人がいた気がします」

店員がまるで話の頃合いをみていたようなタイミングで
それぞれに飲み物を持ってきた。
テーブルにそれぞれ置かれた珈琲二つと、甘い匂いの漂うミルクココアに下鼓を
うちつつストラスがゆっくりと記憶を思い起こすのを待つ。

「…そうだ。あれ、竜騎士の人ですよ」

「竜騎士?なんでそんなのがこんな下町に?」

「さあ…だから不思議に思って声をかけたら女の子に役人を呼ばれちゃって…あの竜騎士どこに行ったんですかねえ」

「その竜騎士の容姿は?」

「え〜。青い髪でした」

そう言ってからエンケラドゥスとストラスはフルフルを見つめた。
フルフルの髪が青色だったからである。

「冗談」

「すまん」

「フルフルだったら話は早かったんですけどねえ」

「でも竜騎士で青い髪なんて珍しいから案外すぐ見つかるかもよ。お城に聞いてみようか」

手がかり手がかり、とどこかうれしそうに話すフルフルにストラスは無言で頷く。
ストラスはどうにも城の人間が苦手なのでそのあたりはフルフルがやってくれるだろう。
するとミルクココアを窮屈そうに口に運ぶエンケラドゥスが動作をぴたりと止めた。

「エンケラドゥス?」

「いかんな」

「なにが?」

フルフルが尋ねたのと同時にカフェの店内から悲鳴があがる。
とっさにその方向を見るとカフェには到底似合わない風貌の男達が数人、
無遠慮に暴れまくっている。
同じくカフェに似合わないエンケラドゥスは遅かったか、と悔しそうにと喉の奥で唸った。

「…今日はいったい何なんでしょう」

「そうだね。ちょっとおもしろいけれど」

「ちょっと行ってくる。おまえ達はここで待っていてくれ」

「あたしも行こうか?」

「頼む」

「じゃあ僕はここでお留守番していますね」

ヒラヒラ〜と手を振って見送ったのだったが、
処刑場に行ってデボラでも呼んでこい!
とフルフルに怒鳴られたストラスはですよね、とため息混じりに仕方なさそうに立ち上がった。


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