三人が盗賊たちを連れ、処刑場まで赴くといつもの喧騒とはまたちがった雰囲気で
処刑場の職員たちが右往左往していた。
そのうちの一人の首根っこをエンケラドゥスが捕まえると職員がエンケラドゥスを
見るなり、みるみる内に顔を青くしていったのでフルフルとストラスは
その職員をなだめるのに大変苦労した。
犯罪者の中にも時折獣人が紛れているときもあるが基本的には
獣人は大人しく優しい性格が多い。
犯罪を犯すのもその理由はだいたい何かから守るためだったりするので
大体は釈放対象だが、それでもその大きさや容姿に畏怖を感じる人は少なくなかった。

「何かあったんですか?」

「それが……誰かが手引きをして罪人を逃がしてしまったんです…って、
あー!ブノワじゃないか!」

「お知り合い?」

職員の男は盗賊の頭の顔を見るなり、指をさして大声を上げる。
周りで走り回っている職員たちが一時足を緩めたがすぐに自分たちの仕事に集中した。
びっくりしているストラスたちよりも驚いている職員は歓喜を抑えられずに
手に持っていた名簿を勢いよくめくっては何かを記入している。

「逃げ出した罪人の盗賊ですよ!捕まえてくれたんですね!?手下たちも…!助かりました!」

「捕まえたっていうか、ストラスの家に強盗に入ったのよ。恐れ多い」

「は、ストラスってあの、フロウルのストラス、さん?」

そこでぴたりと動きを止め、恐る恐る顔を上げた職員は、
大きな黒縁の眼鏡を指で上げるストラスに慎重に尋ねた。

「はい〜。なので引き取ってもらえます?」

「は、はい!!た、ただいま!すぐに!」

先ほど自分を捕まえた役人は証拠にとサートを見せても信用ならんとストラスを
牢屋へ放り込んだが、手続きをする職員はそのあたりの認識が違うらしく
フロウルの証である槌(サート)を見せると二つ返事で盗賊を引き取った。
今回はストラスが本物でなくとも盗賊が盗賊であることはかわりないので
引き取ったのかもしれないがやはりサートとストラスの名前は偉大である。
どの案件よりも最優先事項にまわされ、うろたえていた職員たちの統率が一気に
整っていく。
直接盗賊を引き取った職員がストラスたちの事を話したらしいが
それにしても異様な整いようである。

「あんたなんかしたの?」

「だから捕まったって言ったじゃないですか」

フルフルからじとりとした視線を浴びたがストラスは澄ました顔をして答える。

「あー、デボラが手を回したのかな、じゃあ?」

「そうかもしれないですね。とりあえず盗賊の方はこれで終わりましたけど…アッ」

「どうした?」

「いや、盗賊さんにどうしてドラゴンの涙が必要なのか聞けばよかったですね」

「盗賊なんだからどうせ金目のものが欲しかっただけでしょう」

「そうかなあ」








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