無事に帰宅した三人の姿をみてつらら菊が絶句している。
自分のサート職人の様子がおかしいのと、帰ってきた人数が合わないのでカルンは
当たり前だが首を傾げた。

「つらら菊、説明して欲しいことが山ほどあるんですけれど」

「な、にをです?」

つらら菊は言いよどんだがストラスはまるで機械のように淡々と述べる。

「フルフル達が裏切ったことと、今回のことが貴女の手引きありきの事だったのかと、
それからそちら側の目的と、まあ色々ですけど、どれから説明していただけますか?」

「まて、ストラス。フルフル達が裏切ったとは何だ!?何があった!?」

「それを彼女に聞いてるんです」

話についていけないカルンはストラスに詰め寄ったが眼鏡のフロウルに
おびえたようにしがみ付いているシヴァに気がつき、殊更事態が尋常ではないのだと察した。
明らかに苛立っているストラスはカルンを邪険に押しのけると小柄で
青ざめた表情のつらら菊に詰め寄る。
つらら菊は小さく震えていたが、ストラスはそれでも侮蔑の色を収めることはなかった。

「と、その前にシヴァを休ませたいんで部屋を用意してもらえますか?」

「え?わ、私なら大丈夫…!」

「青い顔して何言ってるんですか。もしかしたらこれから移動するかもしれないんです。少しでも休んでください」

「大丈夫だよ、ガレルの背中でだって休めるし」

「ドラゴンを使える余裕もないかもしれません。言う通りにしてください」

畳み掛けるように言い切られたシヴァは何か言おうと口を開いたがやがてしゅんと
項垂れて小さくうなずく。
つらら菊はストラスに視線を送られると侍女を呼びつけてシヴァを寝室へ案内させた。
侍女とシヴァの背中を見送ってから、自分たちも最初に案内された応接間へ移動する。
一番最初に切り出したのはゴゴウでゴゴウは呆れてものも言えず、眉間にしわを寄せるといつかのようにストラスの頭をスコンとはたいた。
つらら菊とカルンも驚いたがそれ以上に驚いたのはストラスだ。

「何するんですか?」

むすっとしたストラスが口を尖らせて頭をなでる。

「詳しい話は後。お前ちょっとあの子のとこ行って来い!」

「え?なんでですか。休むのに邪魔になっちゃいますよ」

「さっきの今で休めるわけねーだろ!牢にぶち込まれて殺されかけたんだぞ!?
まだ全然怖いに決まってんのにお前は相変わらずそういうとこが鈍いな!?」

「えっ」

ストラスはゴゴウの言葉を飲み込むまでに時間がかかっているらしく、
ぼけっとした表情をしていた。

「えっ じゃねー!まだ不安でいっぱいな時に一人にするやつがあるか!
間抜けヅラしてる暇あったら行って安心させてやれ!」

とどめの蹴りをおしりにお見舞いされてようやく何かのスイッチが入ったらしく、
紙に水が浸透していくように顔色を変えて応接間から飛び出していった。
腹を立てて疲労を感じたゴゴウがゴゴウの言葉で言うのであれば『趣味の悪いソファ』へ
どかりと腰を下ろすとカルンが首をかしげながら怪しげな視線を送ってきた。

「お前誰だ?」

「俺はストラスの友達!あと命の恩人!」

尋問される状況でもつらら菊は飲み物の準備はしっかりしていたので
用意された自分の分のお茶を一気に飲み干すと乱暴にカップソーサーへ置いた。

「俺もたまたま居合わせただけだから状況がはっきりしてねーけど。
カルン、お前が『事情を知らない』って前提でこれまでの話をかいつまんで説明してやるよ」

「安心なさってください。彼は本当に関係ありません」

つらら菊はストラスに気圧されていた先ほどとは違い、
きっぱりとゴゴウに言い切った。

「じゃあ、まあ。ストラスが戻るまで俺もここに来るまでの経緯を知りたいな。
他の事はあいつが戻ってからだ」

ゴゴウはここにいる誰よりも乱暴に、お茶菓子のクッキーを口の中に放り投げいれた。

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