本当に気乗りのしていないカルンを後目に、
ストラス達はなんだかんだと世話を焼いてくれる華流斎から
半ば押し付けられるように道中の弁当と、おかしな感が働いているのかわからないが
なぜか温かい上着を受け取った。
暑いのはなんとかなるが道中、冷えてしまってはいけないと華流斎の謎の配慮である。
自分がドラゴン遣いで、ドラゴンに乗って来たと言いかけてストラス達に制止されたシヴァは、
華流斎は本当は自分がドラゴン遣いだという事を知っているのではないかと
疑いたくなったが、ストラスにその懸念を伝えると
華流斎の場合はおかしな野生の勘がおかしな方向に働いているだけだと答えが返ってきた。

口や素行は荒かったが優しかった華流斎の家を出発し、また無機質な街並みを通り過ぎ、
民家や人気がなくなってくると遠くまで蛇行して伸びている道の先を見つめる。
スォールの領域を抜けていない為、水辺は少なく、森の生き物が横行する山道となっていた。
しかし、ドラゴンを召喚するには少し場所が狭いため開けた場所までは徒歩で移動することになった。


「今まで散々いろんなところを歩いて回ったけどさあ、一度便利なものを体験すると
ものすごく面倒になるね…」

「徒歩がか」

「馬よりも早く移動できたから、性質が悪いよね」

ぽつりと呟くフルフルにカルンが尋ねるとフルフルは空を仰ぎながら頷いた。

「ドラゴンの鱗の感触が恋しいですね」

「ガレルの背中気持ちいいいでしょ!?」

ドラゴンの背中はゴツゴツしていて硬く、温度は確かに感じられたが
空を飛ぶ時に発生する風圧やらでものすごく寒かったので
決して気持ちはよくなかった。
しかしシヴァにとってはそんなものは当たり前の慣れっこであったため、
共感してくれる人間が現れて嬉しいらしく、嬉々とした表情でストラスを見上げた。
ストラスは嬉しそうなシヴァを見られたので嬉しかった。
こまめに休憩をはさみつつ、暫く歩き、時々カルンが地図を広げて今はこのあたりだと
親切にシヴァに説明する。
今回シヴァと一緒に旅をして気が付いたのだがフロウルはどうやら
勘を頼りに今まで採掘の為の旅をしていたらしく、
シヴァに地図を見せられて今はどのあたりかと尋ねられてもカルン以外の三人は
正確にどこ、と指さすことができなかった。
大まかな場所はわかるのだが『涙』の反応を頼りに道を歩いてきただけの三人はあまり
地図に意識が向いていなかったようだ。
地図も正確に見られないフロウルに頭を抱えたカルンはそれから丁寧にシヴァに
現在地を地図に記して教えるようになった。

「ドラゴンが離着できるスペースがあるのはこの先にはあまりないな…
よっぽどこのまま徒歩でゴルゾーニュまで行った方がいいかもしれない」

「どうしよう、ストラス?」

「そうですね、ドラゴンもあまり空を飛びすぎると疲れるでしょうし
あと三分の二くらいの距離なら…」

時間は掛かるがあまりドラゴンに負担をかけるのもいけないので
今日はこのまま歩き、暗くなる前に野宿の準備にかかるという事で話がまとまった。
子供のシヴァがいるので無理はできないだろうと踏んでいたがむしろ逆で、
シヴァは日が暮れるまで歩き続けても疲労の色は見せずけろりとしていた。
それよりもストラスの方が足が痛いだとか腰が痛いだとかひいこら文句を垂れていて
カルンが呆れたように頭を抱えていたぐらいだった。
あたりが暗くなってきた頃とうとう音を上げたストラスの為に
道から少しそれた休めるスペースが十分な場所を探して
フルフル達は野宿の準備を始めた。
休むとなるとてきぱきと動き出したストラスは手早く夕食の準備に取り掛かって
さっさと腰を下ろし、老人のようにお茶を人数分入れ終えるとふう、と
一息ついていた。

「は〜〜、久しぶりに沢山歩くと疲れますね」

「そんなのはお前だけだぞ、ストラス」

「ストラス、おじいちゃんみたいだよ?」

「いやいや、大丈夫だと思って無理していても休むことは大事なんですよ、シヴァ?」

「本当におじいちゃんじゃないの」

フルフルにとどめをさされたがストラスは痛む足をさすっていて
あまり聞こえてはいなかった。

「エンケラドゥスはまだ明日の朝ごはんを探しているんですか?」

「きのこを探させるならゼオリン族ってね」

「俺がどうかしたか」

「きのこあったかなと思って」

がさごそと草むらから姿を現したエンケラドゥスは猛獣のように
鼻をひくひくさせており両手を籠のように胸の前に組んで大量のきのこを運んできた。
ざっと見ても4〜5種類のきのこが地面に広げられると
シヴァが感動して声を漏らす。

「すごい!たくさん!」

「肉よりも山菜やきのこを採る方が得意だとは意外だな」

カルンも感心して腕組みすると服に着いた土を払いながらエンケラドゥスが
首を振る。

「肉も捕れるが朝はあまり味の濃いものは避けた方がいいだろう。
それにきのこは栄養もある」

「結婚しよ、エンケラドゥス」

「ダメですフルフル、エンケラドゥスと結婚するのはぼくです」

「ストラスにはシヴァがいるでしょ」

「いいんですか!?」

「ダメに決まっているだろうが!」

カルンが嬉しそうなストラスを一喝している間、シヴァとエンケラドゥスは
二人楽しそうにきのこの下処理に取り掛かっておりほとんど三人の話を聞いてはいなかった。





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