シヴァは少しくらくらしていたがストラスが振り向きもせずシヴァの腕を掴んで引っ張っていくのでなんとか気を持つことができていた。
心配してくれたのが恥ずかしくてシヴァは腕が痛いとぽそりと呟くと
ストラスはようやく振り向いてくれた。

「すいません、大丈夫ですか?」

「平気」

お互いにどちらの事を言っているのかわからなくてそれ以上の言葉が見つからなかったが
町の中を流れる川の橋へストラスが促し、そこで待つようにと言って飲み物を買ってくる間、
シヴァはカルンの言葉をゆっくりと思い出していた。
集落を襲った野盗を捕まえたいと思ったが、どうしてまたあの焼野原へ向かおうと思ったのだろう。
集落を離れたあと、目の奥に焼付いた光景を思い出すだけで嘔吐を繰り返していたほどに
トラウマとなっていたのに、どうしてまた戻るなんて考えたのだろう。

「帰ります?」

「どこに?」

「あ〜、えーと」

「カルンのところに戻ろ」

「はい。でもソレ飲んでからにしましょう」

「うん」

ストラスが返事に困っているとシヴァはあっさりそう答えた。
逆に気を使わせてしまったと感じてストラスは買ってきたホットミルクを指さして言った。

「ストラス」

「はい」

「変質者なんて言ってごめんね」

それはストラスを牢屋へ放り込んだ言葉への謝罪だった。
飲み物の入っているカップを指でなぞりながら下を向いている少女はもじもじしている。
つい先ほどまでカルンの話を聞いて顔を真っ青にしていたのにもう他人である
ストラスの事を考えているのだ。
ずっと謝る機会を伺っていたのかもしれないが少なからず、ストラスは少女の強さに感心した。

「まあ、事実なので気にしてません」

「ねえ、ストラスって本当に年下が好きなの?」

シヴァが伺うようにしたからストラスを覗き込む。
その仕草が可愛かったのでストラスは正直に答えた。

「はあ、そうですね。シヴァの年ごろがドストライクですね」

「ヘンなの」

「よく言われます」

「…私がついてきた事怒ってる?」

「どうしてです?」

「最初に反対してたから」

「怒ってないですよ嬉しいです」

「じゃあなんで反対したの?」

シヴァは理解できないと眉を寄せる。
大きな眼鏡の縁を撫でながら、うーんと考える素振りを見せたストラスだったが
理由を考えると言うよりはどう説明していいかを考えているようだった。

「危ないからです」

「私ドラゴンがいるから大丈夫だよ。少しなら武術も使えるし」

シヴァは握り拳を作って左手で右の二の腕の力こぶを掴む。
とても可愛かったので抱きしめたかったが人の往来がある町の中なのでストラスは一生懸命に堪えた。

「そうかもしれないですけど、それは身体的に強いって事だけで中身がそうだとは限らないでしょう」

「どう言う意味?」

「例えば…ドラゴンを人質に取られて、助けたかったらこの町の人たちを全員殺せって言われたらできますか?」

「そんなのできるわけないじゃない」

「そうでしょうね。でもそうしたらきっと人質に取られたドラゴンは殺されちゃいますね」

「…私が子供だから?」

むう、とシヴァはむくれた顔で呟く。

「大人でもきっと悩む質問でしたから、シヴァが子供だからとかは関係ないです、でも
大人は決めなきゃいけない時があるので」

「難しくてよくわかんないけど…」

「すいません。でもシヴァはきっといろんなものを見聞きしたら多分とても素敵な大人になると思いますよ」

「それでついていくの許してくれたの?」

「まあ、そんな、とこだと」

「?」

できれば大人になどならずにそのままでいてくれたらいいと思ったストラスだったが
自分のことを考えてくれているストラスへ尊敬のまなざしを向けるシヴァを見ていると
さすがにそんなことは言えなかったので戸惑いながらも
取り繕って頷いて見せた。



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