改めてストラスとフルフルがいる部屋に戻ったエンケラドゥスは先ほどの出来事を
一通り二人に説明した。
一緒に反対するだろうと思われたエンケラドゥスがまさかシヴァの後方支援にまわるとは
夢にも思っていなかった二人は激しく動揺していたが、もしシヴァを連れて行かなければ
自分も行かないとまで言い出したのでこれにはセシリオも本気で泡を食った。
何せそれが冗談ではないのだと、仲間のフロウル二人が証明していたからだ。

「あ〜!エンケラドゥスが敵の手に落ちましたよフルフル…どうするんですか…」

「どうするもこうするも…あっちの条件飲むしかないじゃない…!も〜!
変なとこでエンケラドゥスは優しいんだから!好き!」

「僕だって好きです!」

「ねえ、この人たちって馬鹿なの?」

「いいや、良いやつらなのだ。決して馬鹿ではない」

エンケラドゥスがフォローしていてくれなければただの馬鹿な大人として
扱われたであろう二人を見て床を踏み鳴らしたのはセシリオだ。
結局、シヴァを連れて行く流れになってしまっているではないかと苛立たしげに
ため息を吐いている。

「あ〜もう、お前らなあ!」

「大丈夫ですよセシリオさん。天主様には僕から直接話しておきます」

「お前が?」

「はい。貴方の迷惑にはならないようにしますので」

「今現在迷惑を被ってるけれどもな」

「それは…まあ僕たちもなので大目に見てください」

そうストラスは言ったがこれまでで一番嫌そうな顔をしていた。
ここで一晩過ごす事だって嫌がっていたのだから天主に面会してドラゴン遣いの
シヴァの外出許可を取らねばならないとなると相当に嫌だと思っているのだろう。
エンケラドゥスがシヴァへ準備を促し、セシリオとストラスはひとまず
一緒に天主の元へシヴァの事を伝えに向かった。
天主は訪れた二人の話を聞いてしばらく考えていたが、シヴァが一緒に行くことが
不利益ばかりではないと思ったらしく、野盗の追跡、捕獲よりも
シヴァの安全を優先することを条件に許可した。
なんだかんだとシヴァを拒んでいたストラスだったが実際のところ一番喜んでいるのは彼だろう。
セシリオは天主との面会を終え、フルフル達のもとに戻る途中、何度も
何かを思い出してはニヤニヤするストラスを気持ち悪そうに見ていたからだ。
それは部屋に着いてからも変わらず、妄想の対象になっているであろうシヴァも
セシリオと同じように怪訝な顔をしていた。
ただセシリオと違うのは彼女がその妄想の対象が自分であるのを知らないという事だった。

「じゃあさっさと行こう。準備で随分時間とられちゃったし」

「それじゃあ、セシリオさん、行ってきます」

「お嬢ちゃんの事よろしくな。俺たちもコッチが片付いたら応援に行く」

「ぜひよろしくお願いします」

なんだかんだ言って多忙の身であるセシリオはストラスたちの見送りまで
ついてきてくれた。
本当は城下までついていくと言ってくれたのだがストラス達が城門まででいいと断ったのだ。
城下は罪人の脱走騒ぎが昨日よりも落ち着いたらしく、子供たちが外で元気に遊ぶ姿が
また目立ってきていた。
ところどころに処刑人の制服を着た人がいたので恐らく、
他の罪人が辺りにいないか見回りをしているのだろう。
彼らが見回りをしているという事はデボラ達も他の場所で動いているに違いない。
一言挨拶していこうかとフルフルが提案したがストラスはこのまま山脈へ急ぐと答えた。
フルフルはほんの少しだけデボラが可哀想だと思った。
城から出て、城下を抜けて民家もほとんど見えなくなってきた頃、ストラスがしきりに空の様子を伺っていた。
不思議に思ったエンケラドゥスはどうしたのかと声を掛けたがストラスはまだ空を見つめている。
暫く返事のないままだったストラスは何かに納得したようにようやくエンケラドゥスの問いに答える。

「空から行きましょう。早いし」

「空、と言うと」

「シヴァ、ドラゴンは何人乗りですか?」

「えっ…この人数なら大丈夫だけど…」

「ちょっと、ドラゴンなんかで行ったら目立つじゃない。
野盗に見つかるでしょ?」

「ドラゴンが欲しいなら目立った方がいいじゃないですか。ましてや
竜騎士じゃない僕たちが乗ってれば、ドラゴン遣いのドラゴンだと思って
ホイホイと捕まえに来てくれるかも」

「そうホイホイ上手くいくのか…?」

「まあ、行かなくても、山脈に着くのは早いですし、体力温存できますし。
さっそく、乗る順番ですね!シヴァは一番まえで僕がその後ろでフルフル、エンケラドゥス、なんてどうでしょう!!?」

「却下ですストラスさん」



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