おほん、とわざとらしい咳払いを一つして両手を伸ばし持っている書状を読み上げた。
ここは恐れ多くも王の城だと言うのにまるで自分の屋敷でくつろぐ主人のようないでたちで
ストラスはけだるそうにソファに体を預けていた。

「はあ、王サマが、僕たちに、『ドラゴンの集落を襲った野盗の追跡と調査』を、しろと」

「まあそんな面倒そうな顔をするな。一応こう言うのも含めて国はフロウルを保護下に置いてるんだろ?」

セシリオ自身も言葉では諌めているがどこか面倒くさそうだった。
朝一番で王からの命令状を預かり、ストラスたちフロウルへ伝える仕事をこなしたセシリオも
昨日の騒ぎに収拾に走り回っていてまだその疲れが残っていた。
よりにもよって騒ぎの中心が自分の部下だったため、将軍やら王やらとにかくあちこちから呼びつけられては状況を報告しろと責め立てられていたのだ。

「ダメよセシリオ。ストラスはこう言うのが一番嫌いなの」

「ひとまず拝命しよう。竜騎士は動かないのか?」

エンケラドゥスが尋ねるとセシリオは首を横に振った。

「俺たちはまだ動けないな。ドラゴン遣いのお嬢ちゃんの話ではイフナースが
城下の罪人脱走の手引きをしていたようだからそっちを調べないといけないし」

「気にしないで。まあもともとスォード山脈にはいく予定だったから」

「じゃあなんだってこの態度なんだ」

セシリオは今までフロウルの機嫌を取ろうと気を使っていたのかフルフルの言葉に
少しむっとしてストラスを親指で指さす。
話を聞いているのかいないのかわからないストラスはだるそうにソファにうつぶせになって
顔を伏せていた。

「だから命令されるのが嫌いなのよストラス」

「そういえばあの子どうなるんです?」

ひょいと顔を上げたストラスに眉間の皺を深くしてセシリオはため息交じりに答える。

「ひとまずはこのまま城で保護だな。山脈にいるカルンの話では他にはドラゴン遣いはいないようだが、
応援をよこせと言ってきたという事は何かほかに気になる事があったようだし」

「カルンが?応援を?!」

「フロウル同士だったな。仲がいいのか?」

「よくないからびっくりしてるんじゃないの」

「え〜なんか急に行きたくなくなってきましたね」

「おい、頼むぞフロウル!」

少し駄々をこねたストラスにセシリオが声を荒げた。
しかし、エンケラドゥスがそれを笑い飛ばした。

「案ずるな。拝命したと言ったろう」

「そうだぞう、案ずるな騎士団長」

「お前ら俺をからかってんのか?」

「…こうやってカルンと遊んだわけじゃないんですよ僕。なのになんで嫌われるんですか」

明らかにからかわれている気がしてセシリオは機嫌悪そうに三人を睨む。
さすがに騎士たちをまとめる団長を務めているだけあって、眼光に凄味が増していたが
人の睨みよりも凶暴な獣とにらみ合う事が多いフロウルがそれに動じるわけもなく、
フルフルは肩を竦め、エンケラドゥスはちらりとストラスを見た。
ストラスはどこまで言えば相手が機嫌を悪くして、嫌悪の感情を表すのかを
セシリオで試していたようで大きくため息を吐く。

「わかった、ストラス、私が聞いておく」

「エンケラドゥス〜!大好きです〜!あ〜もふもふ」

だらだら寝転がっていたストラスは床に直に座っていたエンケラドゥスに横から抱きつく。
エンケラドゥスの毛並はふさふさしていた成人のストラスが腕を回しても
届かない太い首回りに顔を埋めるとほどよい温かさが肌に伝わってきて癒される。
すると急にフルフルがその横でぷるぷる震えながら顔を両手で押さえ始めたので
気分が悪いのかとセシリオが様子を伺ったがフルフルは
もふもふしているストラスが羨ましいようで本気で悔しがっていた。
どうやらエンケラドゥスに抱き着くのは二人の間で軽く勝負ごとになっているらしい。
呆れたセシリオはストラスに負けないぐらいの大きなため息を吐いて馬鹿馬鹿しくなり、
三人が飲んでいたお茶を見て勝手に自分の分のお茶を淹れて飲み始めた。







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