イフナースは伝令の男にわかったとだけ答えた。
敬礼をしたままの騎士は次の指示を待っていたが、騎士団本部室内の雰囲気が
少しおかしいのにようやく気が付きすぐにまた敬礼をして出ていく。
その様子は慌てていたがドアは思っていたより静かに閉じられた。
気まずくしているのは青い髪の騎士たちでイフナースを罵るべきか、安堵するべきか迷っていた。
フルフルが紅茶を飲む音が響く。
誰もがイフナースの行動を見守っているのだ。

「来客があるようなので失礼します」

「その子供の娘とは?」

「さあ、わかりません」

セシリオはけだるそうに首をもたげさせながら尋ねた。
イフナースは笑っているのか、怒っているのかわからない表情で答える。

「僕たちも同行しても?」

「どうぞ」

ストラスが言ってもイフナースは顔色一つ変えずに頷く。
ストラスはすい、と立ち上がり同行を許可したにも関わらずさっさと部屋を出ようとする
イフナースの後をついていく。
フルフルとエンケラドゥスもそのあとに続いたがフルフルはセシリオに軽く手を挙げて挨拶した。
セシリオはややしばらく考えていたようだが結局自分も同行しようと決めたらしく、
もう二人の青髪の騎士を持ち場に帰し、ポールにはここで待機するように命じる。
イフナースは同行者が増えても気にも留めておらずまっすぐ前だけを見ている。
外に出るとイフナースについていく男女が二人と、獣人、そして騎士団長と異色の組み合わせに
あたりを歩いている騎士たちが好奇の目を向けていた。

「あら、見つかったの?」

「あ、デボラもちょうどいいから来て」

「何が?」

「ん〜ちょっと」

本部から少し離れた石の階段に腰を掛けていたデボラとコルベルが駆け寄ってきたので
フルフルはデボラの腕を取る。
フロウル達の様子から何か分かったことは確かだが返事があいまいで煮え切らない。
仕方なしにフルフルの言うように同行することにしたデボラとコラベルは
騎士団長のセシリオでなく、青髪の騎士が先導しているのが気になった。

「あの人?」

「なんだかちょっと色々あるみたい」

「何がよ?」

「私もよくわかってないんだけどたぶんついていけばわかるんじゃないかな」

ひそひそと声を潜めて話してはいるが、竜騎士団には女子が少ないせいか、
デボラとフルフルのように『女子』が二人でいると楽しそうにおしゃべりをしているように
見えるらしい。
それも彼らが注目を引くもう一つの理由でもあった。
正直なところを言えばストラスたちも小声で会話をしている女子二人の緊張のなさが
目立つらしく、苦虫を噛んだような表情で後方を歩く二人の気配を伺っていた。
すみません、とセシリオに呟いてみるとセシリオはまんざらでもない顔で気にするなと請け合ってくれた。

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