ドラゴンの一部が流通されるいつもの市場とは違う所謂、闇市場に関しては
竜騎士のセシリオよりもフロウルの三人の方が詳しいので近いうちにあたってみることを
約束して三人はあの堅物そうな部下の男を待った。
間もなくして現れた男はその背後に3人の男を従えていた。

「ご苦労、ポール」

「いいえ。話はお済に?」

「承諾してもらえた」

「いやいや。やるなんて一言も言ってませんけどね」

「なんだ。フロウルは薄情なのか?」

「フロウル?」

厄介ごとはごめんこうむりたいストラスは来客用のソファに身を預けながら言った。
三人の反応が悪くないものだったのセシリオは快諾してくれたのかと思っていたのでいくらか
意外そうに眉をひそめる。
するとあの堅物そうな部下のポールが連れてきた男のうちの一人がセシリオの言葉に反応した。
セシリオは緩くなっていた緊張をほんの少しだけ占めて青髪の男の一人に
返事を返す。

「彼らはフロウルだ。何やら少女を探しているらしいんだが、その少女が青髪の竜騎士と
話していたらしいと言うのでお前たちに来てもらったんだが…」

セシリオはそこで言葉を濁したが呼ばれた三人はその意図を汲み、三者三様に答える。

「自分は会っていません」

短髪で、恰幅のよい体つきの男はきっぱりと言った。
彼はどうやら訓練の途中だったらしく軍服とは違った動きやすそうな少しゆったりとした衣服を身に着けている。
軍服ほどの装飾はなかったが軍服と同じ黒色の服だったので竜騎士のものだろうと一目でわかる。

「私も…竜の世話をしていましたから。何でしたら同僚に聞いてください。一緒にいましたし」

襟足ほどまでのカーブのきれいな髪型の男は先ほどの男よりも控えめに言った。
この男も似たようなゆったりとした衣服だったが肘とひざには防具のようなものを付け、
ごつい長靴を履き、右手には分厚い手袋を握っている。
まるで馬の世話をしているようないでたちでポールに呼ばれたその時のままで
ここを訪れたのだろう。
最初の男同様に衣服の色は黒でやはり彼も竜騎士なのだとわかった。

「私も見ていません」

最後の男は短く答えただけだった。
セシリオやポールのようにきっちりと軍服に身を包み、腰には剣を携えている。
少し愛想がない印象を受けるところはポールと似ていた。

「えー?三人とも会ってないの?」

「僕の見間違いだったかなあ」

「本当に会っていないか?」

思い描いた返事が返ってこずに二人ががっかりしているとセシリオが念を押す。
だが三人は一様に会っていない、の意として首を縦に振るだけだった。


「困りましたねぇ。じゃあ、ちょっと質問を変えてもいいですか?」

困ったと言った本人がとても困っているようには見えないのだがストラスは
わざとらしく腕組みをして言った。
本人としては威厳も込めたかったようだが、となりにいるエンケラドゥスのおかげで
ほぼ台無しだ。
ちいさな子供が大きな大人に張り合おうとしているように見えてほんの少し滑稽だった。

「ストラス?」

「どうして処刑場の罪人を逃がす必要があったんです?」

顔は笑っていたが雰囲気が一気に冷たくなった。
フルフルとエンケラドゥスは視線だけをストラスに送ったが動じていない。
動いたのは竜騎士たちだけだ。

「どう言う意味だ?この三人のうちの誰かが犯人なのか?」

「直接は手は出してないんじゃないですか?あの子に指示していたみたいだし…
指示とは違うかな。交換条件を出していましたね」

セシリオも驚いてはいたが取り乱してまではいない。
処刑場での罪人脱走のニュースは城にも届いていて通常の騎士たちにも捕縛の協力要請が
出ていたが、いまだ犯人は見つかっていないと言う。
ストラスは三人に語りかけていたが青髪の騎士たちは動揺しているばかりで
ストラスの言葉には答えない。

「じゃあ、また質問変えますね。あの女の子とどこで待ち合わせしていますか?」

勿論、これにも誰も答えない。
団長であるセシリオが答えを促すかと思えばセシリオも腕組みをして黙って返事を待っているだけだ。
いらぬ嫌疑をかけられた青髪の騎士たちはただわからない、知らないと答えるばかり。
それしか答えられぬのだから仕方がない。
だが疑いの目は確実に自分たちへ向けられていた。
緊迫する空気の中、騎士団長室のドアがノックされた。
扉が開き入ってきた騎士はきびきびと敬礼すると毎日の訓練で指導されている通りにした。

「失礼いたします、イフナース殿に子供の娘が面会したいと言っておりますが」




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