rainy
曇天。表面張力のおかげでこんもりと、なみなみに水を溜められたコップみたいに、ほんのちょっとの刺激で水滴が零れ落ちそうな、そんな空の日のこと。


 何かが零れる水曜日



「雨女、昨日のドラマ見た!?最終回!」
「見たに決まってるでしょ!ほんと感動した!あの雨の中でさぁ」
「そう!そう!それ!あんなびしょ濡れで呼び止められたら誰だって落ちるよねー!」
「ほんと泣けるよね!」
「うん!泣ける泣ける!ううっ、マサハルーっ!って感じ!」

友達との会話は、火曜10時の大人気ドラマの話題で持ちきりだった。主演の俳優さんの名前を叫んでうっとりする友達。ちょっと気持ち悪いよ、なんて突っ込みながらも無理はないなあと内心思ってみたり。

「最近雨ばっかりなのにさあ、なんでわたしにはあんな出会いが無いのかしらねー」
「ほんとそれ!ドラマずるい!ずるい!」
「雨もずるい!水も滴るなんとやら、みたいな!3割増しで、男の人がかっこよく見えるよね!」

マサハルなんてもともとカッコいいからもうどうしよう!なんて続ける友達を笑っていたら、がたん、と斜め後ろの席が揺れた。廊下には一目でそのひととわかる赤木くんの影があった。ちょいちょい、と三井くんを手招きしている。バスケ部は仲良いなあ。

「ほんと、雨はずるい」

つい24時間ほど前の三井くんを思い出す。びしょ濡れの彼は、たしかに3割増しだったような気がした。




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